東アフリカ、ケニア共和国のナンディ地方には、昔から大きく凶暴な怪物がいると伝えられている。
その生物の姿がクマに似ているため、生息地域から「ナンディ・ベア」と呼ばれている。
現地では原住民たちに広く知られ、昔から恐れられていた存在だったようで、「チミセット(悪魔)」や「ゲテイト(脳食らい)」などと言い伝えられている。
現地の人々の間で半ば伝説のように語られている証言などによれば、ナンディ・ベアは非常に大きな姿をしており、どう猛で夜行性。夜に人間を襲い、頭部を叩き潰して脳髄を食べてしまう、悪魔のような半獣半人の獣だとされている。一部は既知の猛獣によるものに噂の尾ひれがついたものがあるかもしれないが、実際に現代でもナンディ・ベアに襲われたとおぼしき動物や人間の変死体が発見されることがあるという。
そんな神話の生物と実際の生物の“はざま”を行き来していたナンディ・ベアだが、20世紀になって英国の探検家がナンディ地方で奇妙な生物を発見。現地の人々の証言を調査したことにより、世界中に知られることになった。
ナンディ・ベアの姿は「鼻面が長く、耳は小さく、前足より後足のほうが短い。普段は四足歩行だが、攻撃する時は2本足で立ち上がり、木に登ることもできる」と報告された。
そう、クマに似た外見と生活スタイルをしているのだ。
なお、大きさは3メートルほどとのことで、クマの中でも大型の部類になる。実際、英国の探検家や20世紀に入ってからの目撃情報でも「クマのようだった」と形容されている。
しかし、アフリカ大陸にはクマは生息していない、というのが生物学上の定説である。果たして、ナンディ・ベアの正体は何なのだろうか。
一部はハイエナの誤認ではないかとする説もあるが、大きさの問題からハイエナ説は否定されている。
そこで考えられたのが、古生物の生き残り説だ。
北アフリカのアトラス山脈(モロッコ近辺)には19世紀までヒグマ類が生息していたとされている。ナンディ・ベアはこのヒグマが南下して環境に適応したものではないか、とする説が一つ。
もう一つはテレポートアニマル説。つまり、本来生息していない生物が何らかの要因で移り住んだとするものだ。ちなみにこの説については「サーカス団がアフリカに持ち込んだクマが野生化したのでは」と考えられている。
しかし、一番根強く唱えられているのが、大きさとクマに似た姿から絶滅した奇蹄目の古生物「カリコテリウム」がナンディ・ベアの正体ではないかとする説だ。
カリコテリウムは現在の馬の祖先にあたるが、非常に大きな体と前足に鉤爪を持ち、ゴリラのようにナックルウオーキングをしていたと考えられている。
だが、基本的に草食であると考えられているため、原住民らの攻撃から身を守ろうとして攻撃し返すことはあっても、その肉を食べることはないだろうと考えられる。もっとも、ナンディ・ベアに殺害された死体をハイエナなどの猛獣が食べたりすることは考えられるが…。
果たして、ナンディ・ベアの正体は何なのか。絶滅を逃れていたクマなのか、それとも未知の生物なのか。いまだに新種が生存していると考えられているアフリカ大陸で、ナンディ・ベアはひっそりと生活しているのかもしれない。












