飛躍の要因とは――。卓球の全日本選手権最終日(29日、東京体育館)、女子シングルス決勝は、早田ひな(22=日本生命)が木原美悠(18=エリートアカデミー)に4―2で勝利。3年ぶり2度目の優勝を果たし、2019年大会の伊藤美誠(22=スターツ)以来、史上4人目の3冠に輝いた。24年パリ五輪の選考レースで独走態勢に入った若き女王が、大舞台で存在感を十二分に発揮。日本卓球界初のプロ選手で五輪4大会出場の松下浩二氏(55)も成長ぶりに太鼓判を押した。

 試合後に見せた涙は、進化の証しだった。「私自身、天才ではないので、技術、メンタル、体のケア、努力しないと身につかない」。自国開催の21年東京五輪は、同じ00年生まれで〝黄金世代〟の伊藤、平野美宇(木下グループ)が出場した一方で、早田はリザーブとして2人の活躍を見守った。悔しさを味わったからこそ、地道に努力を重ねてきた。「お父さん、お母さんを含めて、(石田)大輔先生、チームひなのみんなが支えてくれて、私はここにいることができる」。自然と思いがあふれ出た。

 今大会は張本美和(木下アカデミー)、平野、石川佳純(全農)と難敵を立て続けに撃破。〝死のブロック〟での戦いだったものの、早田に迷いはなかった。

「『ここを乗り越えないと、パリ五輪で中国人選手に勝てないよ』と神様に言われているような組み合わせだった。『ここを乗り越えられたら本物だよ』と言われてるような気がした」

 木原との決勝は、2ゲームを先取される苦しい展開だった。それでも「人間、誰だって負けることはあるから、負けても大丈夫。負けを認めてから自分自身が強くなった」とメンタルを巧みにコントロール。要所で着実に得点を奪い、流れを引き寄せた。

優勝インタビューでは涙ぐむ場面も(代表撮影)
優勝インタビューでは涙ぐむ場面も(代表撮影)

 混合ダブルス、女子ダブルスに続く日本一。その女王について、松下氏は「一番伸びている選手。他の女子選手に比べると身長が高いですし、その体格差を生かして、すごい速いボールを打てますし、技術的なところがすごく成長している」と高評価を下した上で、ある〝変化〟を指摘した。

「以前はどうしても身長があるので、台から少し距離を取って打つ傾向にあった。大きなスイングだと、それだけ時間も必要なので。だけど、最近はコンパクトに振れるようになったので、台に近いところでプレーをすることができるようになった」

 もともと強打には定評があったが、さらに少ない時間でボールを打てるようになったため、より相手がタイミングを計ることが難しくなったという。

 早田の次なる目標は、世界選手権(5月、南アフリカ・ダーバン)での女子シングルス4強入りだ。「勝っても負けてもパリ五輪の選考レースやパリ五輪に選ばれた時に絶対に生きると思うので、1試合1試合を無駄にしないようにしたい」。確かな自信を胸に、新たな戦いへ挑む。