東京・狛江市の住宅で、19日に大塩衣與さん(90)が両手を縛られて亡くなっていた強盗殺人事件で、別の強盗致傷事件で逮捕された自衛官(23)のスマートフォンに、大塩さんの自宅住所が記録されていたことが明らかになった。関東各地では年明けから類似の強盗事件が多発。警察は背後に強盗グループが関わっていると見ているが、特殊詐欺や悪徳商法に詳しい専門家は特殊詐欺グループが犯行に及んだ可能性を指摘した。
捜査関係者によると、12日夜に千葉県で発生した強盗致傷事件で逮捕した自衛官のスマートフォンを解析したところ、大塩さんの自宅住所と「大塩さんを狙って強盗に入る」との情報が記録されていたことが発覚。19日午後に千葉県警の情報提供を受けた警視庁の警察官が駆けつけたところ、両手を縛られて腕を骨折し、頭部から出血した状態で亡くなっている大塩さんを発見したという。
近隣住民は大塩さんについて、「旦那さんと六本木周辺に住んでいたようだが、旦那さんが亡くなって5年くらい前に息子夫婦と一緒に引っ越してきた。孫2人を含めた5人家族で、息子さんは仕事で留守がちだったみたいだ」と明かす。
また、別の近隣住民は「面識はないが、ガレージにベンツが4台も止まっていて近隣では有名だった。このへんは特殊詐欺の発生件数が都内でもトップクラスで、うちにもよく非通知の電話がかかってくる。そういう人に狙われたのではないか…」と不安げに話した。
実際、都内にある102の警察署のうち、事件現場がある調布署管内では2016年に特殊詐欺被害件数がトップを記録。その後も被害件数は都内でも有数のエリアだった。
今回の事件に特殊詐欺グループが関与した可能性はあるのか? 特殊詐欺や悪徳商法に詳しい多田文明氏は、19年に起きた“ある事件”との類似性を指摘する。
「年明けから頻発する関東連続強盗事件は、手足を縛り、3人組で犯行に及ぶ手口が『アポ電強盗殺人事件』と似ている。もともと年末年始は特殊詐欺グループにとって鬼門。遠方の親族が帰省して特殊詐欺への注意喚起をするので、警戒心が高まって成功率が格段に落ちる。そうすると『だませないなら…』と、手荒な犯行に出ても不思議ではない。特殊詐欺グループにはそのノウハウがある」
19年に都内で起きた「アポ電強盗殺人事件」の主犯格の男は、まさに特殊詐欺グループのノウハウを利用していた。男はもともと特殊詐欺グループで活動しており、脱退後に特殊詐欺グループの典型的な手口である“アポ電”をかけて資産状況などを聞き出した高齢女性の自宅に押し入り、今回と同じように手足を縛って死亡させていた。
多田氏によれば、特殊詐欺グループはターゲットの資産状況や家族構成などを確認する際、“アポ電”のほかに直接訪問することもあるというが、今回の被害者の大塩さんの自宅周辺では、最近リフォーム業者を名乗って訪問する不審な人物が相次いで確認されていた。
大塩さんの事件は、12日に千葉県で起きた強盗致傷事件との関連があるとみられるが、このほか茨城、栃木、埼玉で起きた計4件の強盗致傷事件について同一グループの犯行である可能性が浮上。また、警視庁が17、18日に窃盗容疑で逮捕した19歳の男3人についても、関東各地で頻発する連続強盗事件に関与した可能性があり、1人は「金に困って闇サイトに応募して指示役に従い実行した」と供述しているという。
同じような手口が続いていることから、多田氏も一連の強盗事件について「指示役がいて、闇サイトで集められた複数の実行犯グループが各地で犯行に及んだ可能性がある」と指摘。点と点が線でつながり始めた。