お風呂のお湯の温度を上げがちなこの時期に注意したいのが浴室内熱中症。特に高齢者は42度以上のお湯に10分つかるだけでリスクが高くなるという。予防法と対処法を救急科の境野高資医師に教えてもらおう。

 ――冬になるとヒートショックという言葉をよく聞きますが、浴室内熱中症は別物ですか

 境野医師(以下境野)実は浴室内熱中症やヒートショックという言葉は正式な医療用語ではないんです。これらはメディアが作った造語なのですが、浴室内熱中症というのは文字通りお風呂で熱中症になってしまうことで、ヒートショックは寒いところと暑いところを行き来することで血圧が大きく変動し具合が悪くなる症状を言います。

 ――浴室内熱中症は湯船に長時間つかった場合のみ起こるのでしょうか

 境野 浴室内熱中症は短い時間だと入浴後10分程度で起こってしまうこともあります。特に42度以上のお風呂に10分以上つかっていると浴室内熱中症を起こしやすくなります。全員ではありませんがそういった状況で熱中症になる高齢者の方は一定数います。

 ――なぜ高齢者に多いのですか

 境野 そもそも熱中症というのは、体温のコントロールが利かなくなって体内の熱がどんどんたまってしまう状態のことを言います。高齢になると体温を一定に保とうとする機能が低下してしまうため、寒いところにいるとどんどん体温が下がったり暑いところでは体温が上がりやすくなるんです。また、人間の体は体温が上がったときに汗をかいて体温を下げようとするのですが、高齢になると、もともと持っている水分が少ないなどの関係から汗をかきにくくなります。熱い湯船を好む高齢者の方は多いと思いますが、そういった背景も高齢者が浴室内熱中症になりやすい理由にあると思いますよ。

 ――入浴時はどのようなことに気を付けると良いのでしょうか

 境野 高齢の方に関しては湯船につかる場合は、42度より低いお湯で10分以内の入浴が良いですね。

 ――浴室内熱中症を防ぐためにできることを教えてください

 境野 水分不足が熱中症を引き起こす原因にもなりますので、お風呂の入浴前後、特に入浴前にコップ1杯の水やお茶などを飲んで水分を取りましょう。なお、入浴前の飲酒は避けてください。お酒を飲むと利尿作用で尿を出しやすくなり体内の水分が減るため、より熱中症になりやすい状態になってしまうんです。また酔うことで体の変化に気が付きにくくなるので危険です。

 ――身近な人が入浴中に浴室内熱中症になった場合、周囲の人はどのようなことをすれば良いですか

 境野 湯船につかった状態でぐったりしている場合は、水没しないように浴槽の栓を抜いてください。意識がない場合は救急車を呼びましょう。また意識がなく正常な呼吸をしていない場合は心臓が止まっている可能性がありますので心肺蘇生を行う必要があります。意識がある状態だったらお水のシャワーをかけるなどして体を冷やしましょう。

 ☆さかいの・たかし 聖マリアンナ医科大学医学部卒、聖マリアンナ医科大学病院 救命救急・熱傷センター、国立成育医療研究センター 小児救急センター、千葉西総合病院などで救急総合診療、麻酔、小児医療に従事。またクルーズ客船船医として世界一周の経歴を持つ。現在はフリーランス医師として被災地支援や離島医療支援に携わっている。