電車内で心肺停止した女性医療ライターが奇跡の生還とリハビリの苦労をつづった連載を覚えている人も多いはず。2021年3月までの1年間、本紙で筆を執った熊本美加氏は、その後、自らの経験をさらに多くの人に伝えるべく奔走している。中でも、先日発売した漫画付きの実用書「山手線で心肺停止!」(講談社)はスマッシュヒットとなっており、話題沸騰中だ。現在の状況や改めて伝えたいことを届けてもらおう。

 みなさま、ごぶさたしております。お元気でお過ごしでしょうか? 恥ずかしながら帰ってまいりました、医療ライターの熊本です!

 約3年前になりますが、山手線で心肺停止で救急搬送されました。一命は取りとめましたが、脳に酸素や栄養が滞った影響で高次脳機能障害に…。そんな私に連載のチャンスを与えてくれたのが東スポさんです。

 一見、健康そうに見えていても「まさか」は誰にでも起きる。実際、私は自分に起きてしまった。この体験から「隠れ心臓病を察知できるのか」「まさかのために何か備えられるのか」「リハビリって実際はどうなの」などの記事を発信するようになりました。それが奇跡的に生き延びた私の使命だと思ったからです。

 すると想像以上に多くの反響があり、「突然死のニュースを聞くと怖いけれど自分だけは大丈夫」と根拠のない自信で緊急事態に備えていない人が多いとわかりました、私がそうだったように…。今回発売した本ではどんな症状なら病院に行くべきか、緊急時のために備えておきたいことなどを紹介しています。命を守るヒントがひとつでもあれば幸いです。

 備えの話にもつながるので、私の近況報告もさせてください。今年3月、買い物帰りに胸のモヤモヤに襲われ、急いで帰宅。横になり、いつものようにニトロ(血管拡張薬)を舌下したのに、3錠投入しても痛みは消えず、死の恐怖を感じ「#7119」(救急車を呼ぶかどうか悩んだ場合の連絡先)へ電話。しどろもどろに症状や持病を話すと、そのまま119に転送され、10分後に救急隊員が駆けつけてくれました。

 いろいろ質問されるのですが苦しくて答えられず、私は力を振り絞って鞄を指さしました。その中には、私が蘇った後に常に携帯している緊急時の連絡先、医療情報、お薬手帳をまとめたポーチが入っていたのです。おかげで、すぐさま情報が共有され、かかりつけ医に搬送されました。結果、心臓ではなく胆石の発作でしたが、備えがあったおかげで、迅速な対応に結び付いたのです。初めて自分で自分を褒めました(笑い)が、皆さんもこのような備えはぜひ。

 もうひとつ大きな変化は、一人暮らしでフリーランスの私が「もしも再び自宅で倒れたら…」との恐怖心で、一切なかった近所や地域のつながりを求めるようになったこと。手話サークル、着付けレッスン、マンション理事会などへ積極的に参加。すると買い物や散歩であいさつを交わす知り合いができ、「何かあったら気が付いてくれるかも」と期待できるようになりました。

 おしんの再放送のモラハラシーンのストレスが胸が痛む原因と決めつけ放置し、死にかけたほどの朝ドラ好きの私。伝えたいのは、「あきさみよー」「まさかやー」で“ちむどんどん”(胸がドキドキ)しても、不快な症状が一瞬ではなく数分続く場合は「隠れ心臓病」を疑ってほしい。東スポの記事でちむどんどんしても同じ。痛みが続く場合は病院へ行ってください(詳しい予兆は左参照)。何もなければ安心ですし、何かあったら手を打てます。忙しい、メンドクサイと思っても、後悔がないように動いてほしいと願います。グッドラック。

【病院に行くべき胸の痛み】

 ◆症状を感じる場所

 ・胸全体

 ・ネクタイの範囲

 ・背中に広がる

 ・左の腕や奥歯に広がる

 ・ピンポイントでここが痛いというより、このあたりといった手のひらより広めの範囲

 ◆胸部症状の感覚

 ・圧迫感

 ・鋭い痛みではなく重い石がのっかっているような重苦しさ

 ・何かにギュッと胸をつかまれるような感じ

 ・鈍痛と同時に左の奥歯がうずく

 ・脂汗をかく。ちょっと普通じゃない苦しさ

 ・痛みの長さは5分以上、または10~15分間、波がなく症状が続く

 ・繰り返し症状が出る、または最近頻度が増えてきた

 ・突然脈が速くなった、遅くなった。脈の乱れが続く ※著書から