【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑492】獣人型UMAと言えば、北米大陸の「ビッグフット」が有名だが、少し前はヒマラヤの「雪男」こと「イエティ」が筆頭であった。

 イエティはチベット、ブータン、ネパールの人里離れた山々や森林に生息すると信じられており、20世紀になって、登山家たちがその姿や足跡を写真に収めることに成功して注目を集めることとなった。イエティは昔からヒマラヤ山脈周辺に住む人々にとって精神的・文化的に重要な存在であり、現地にはイエティが実在すると信じている人も多い。しかし、科学者の間では実在する決定的な証拠が出てきていないため、本当に実在するのか疑問視されている。

 そんなイエティの正体について、「地元でもめったに見られないクマ」だったのではないか、という説が昔からささやかれている。それはこの地域に今も生息する絶滅危惧種のチベットヒグマだ。これは多くの専門家が唱えている説であり、日本でも、2012年7月に青森県の登山家、根深誠氏が出版した書籍「イエティ」で発表した説だ。ヒマラヤの民族はチベットヒグマの存在を知らず、雪男であると探検隊に伝えたのがもととなり、伝説が広まったというものだ。

 ネパール自然保護基金の研究者であるマドゥ・チェトリ氏もこの説を唱えており、「両者の身体的特徴、足跡、そして何か面白いものや不自然なものを見つけた時にどちらも二足歩行をする」という共通点が、イエティ=チベットヒグマ説の裏付けになっていると語る。また、「地元の人々、特に遊牧民の家族は高地の牧草地にいるチベットヒグマの毛のサンプルや足跡を『イエティのものだ』と言って私に何度か見せてくれました」と証言もしている。

 イエティは地域によってさまざまな呼び名で呼ばれており、一部地域では小型のイエティを「ミティ」と呼んでいる。この個体はヒマラヤマーモットの巣穴を掘り返すと言われているが、これもヒマラヤヒグマの習性の一つだそうだ。

 イエティ=クマ説は非常にありふれた、興ざめするものかもしれないが、実は現在ヒマラヤヒグマはイエティ並みに珍しい存在となってしまっている。

 2011年に記録されたネパールの絶滅危惧種リストでは、ヒマラヤヒグマはネパール全体でわずか20頭しか記録されていないという。そのため、山に詳しい現地の人でも遭遇するのが珍しく、「山でヒグマを目撃した際にイエティに出会ったと錯覚しても無理はないだろう」とチェトリ氏は語る。

 また、近年になってイエティの目撃証言が激減しているのも、ヒマラヤヒグマが急速に個体数を減らしていることに原因があるかもしれない。

 イエティの目撃証言の全てがヒマラヤヒグマの誤認だったとは言い切れないが、少なくとも一考に値する説であることは間違いなさそうだ。

 ちなみに10年ほど前に米国、カナダなど5か国の専門家が集まってシベリアで雪男の大捜索が行われた結果、巨大な足跡と数本の体毛が発見された。発見された体毛に対しDNA鑑定したところ、猿よりも人に近い遺伝子が発見されたことが判明している。そのため、地域によっては本当に謎の獣人型UMAが生息しているのかもしれない。