演技に込めた思いとは――。2014年ソチ&2018年平昌五輪金メダルでプロに転向した羽生結弦(27)が自身初の単独アイスショー「プロローグ」(4日、横浜・ぴあアリーナMM)を開催。詰め掛けた満員の7900人の前で、全てを出し切った。

 複雑な思いを氷上でぶつけた。かねてクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を「唯一のモチベーション」と公言。北京五輪では国際スケート連盟(ISU)公認大会で初めてプログラムに入れたジャンプとして認定されたが、初成功の座はイリア・マリニン(17=米国)に譲った。「僕自身は五輪2連覇が夢だった。その後に4回転半という夢を改めて設定して、追い求めてきた。競技というレベルでは、僕は達成することができなかったし、ある意味ではISU公認の初めての4回転半の成功者にはなれなかった。そういう意味では終わってしまった夢かもしれない」。ショックがないと言えばウソになる。

 ただ〝羽生結弦〟は必ず立ち上がる。「みなさんに期待していただいているのにできない。やりたいと願うけど、もう疲れてやりたくないみたいな。みなさんに応援していただければいただくほど、なんか自分の気持ちがおろそかになって、壊れていって、何も聞きたくなくなった。でも、やっぱりみなさんの期待に応えたい。本当に自分の心の中のジレンマみたいなものを表現したつもり」。この日は自ら振り付けを手掛けた「いつか終わる夢」を初披露。クールダウン時の動きを参考に、観客たちに自らの胸の内を訴えかけた。

 約90分間、ほぼ無休で演じきった。ただ、満足はしていない。「まだまだやりたいことや、こうできたかなと思うところもある。自分1人ではできなかったし、自分の意思をここまで尊重していただきながら、こうやってみなさんが心を1つにして動いてくださっていることは、普通のアーティストとしてはないことだと思う。これからもみなさんと頑張っていきたい」。

 目指す山は高いほど登りがいある。その道のりは自らの足で築いていく。