【多事蹴論(56)】キングが語ったW杯メンバー落選の率直な“心境”とは――。1998年フランスW杯に初出場を果たした日本代表の岡田武史監督は「エース」と呼ばれていたカズことFW三浦知良、MF北沢豪、DF市川大祐をメンバーから外した。W杯メンバーは22人。合宿地スイスからイタリア経由で帰国したカズは会見を開き「魂みたいなものは向こうに置いてきた」と発言し、岡田ジャパンの躍進を願った。

 日本にとって初の大舞台は注目を集めていたため「カズ落選」は世論を巻き込んで社会現象に発展した。これまで日本のエースとして世界へと導いたカズをメンバーから外したことに「サブでも残すべき」「非情すぎる」との意見もあれば「プロは実力の世界」「メンバーは監督が決める」など、さまざまな見解が飛び出し、大きな議論となった。今でも注目される“事件”だが、カズがJ1神戸に所属していた2001年、落選当時の心境を語っていた。

 カズは「W杯メンバーから外されてから『岡田監督を恨んでいないのか』って聞かれることがあるんだけど、そんなのまったくないから。そりゃあ、外されたことは選手なんだし、プロとしては悔しいよ。でも、それは自分の実力がなかっただけ。どんな監督の下でもメンバーに選ばれるような実力がなかった。それだけだよ。ホントに、本気でそう思っている」と強調した。

 実際、W杯メンバーから外されて以降、カズから岡田氏に対する不平や不満、恨み言などを聞いたことがない。W杯初出場で力の入っていた日本では知名度の高いカズ落選に“判官びいき”で大きな反響となり、岡田氏への風当たりは強くなったが、王国ブラジルでプロになったカズからすれば「落選」に対して恨むよりも「プロ監督の決断」として冷静に受け入れたようだ。

 エースは「試合に出るメンバーは監督が決めるものだし、岡田さんはプロ(の指導者)としてメンバーを選択した。信念を持って決断したってことでしょ。ブラジルだって素晴らしい選手が代表に選ばれないことがあるしね。また、頑張るしかないよ」と前を向くと「岡田さんは良い監督だよ」と笑顔を見せた。

 その上で「オレはW杯メンバーに選ばれなかったけど、岡田さんは良い監督だと思うよ。それと松木(安太郎)さんはオレをずっと使ってくれた良い人だよ」。カズが所属していたV川崎(現東京V)時代の93、94年に監督を務めた指揮官と比較。「だからさ、松木さんは良い人ってこと。岡田さんは良い監督…そういうことなんだよ」と意味深に語っていた。

 岡田氏はカズをW杯メンバーから外したことに「代表が勝つためにどうするかを考えた」「使う場面がなかった」などと説明していたが、日本サッカー界を揺るがした大騒動だったのは間違いない。 (敬称略)

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