【多事蹴論(52)】 日本屈指の名将がインタビューを拒否した背景とは――。2009年10月14日、翌年の南アフリカW杯に向けてチーム強化に取り組んでいた日本代表は国際親善試合トーゴ戦に5―0で勝利した。FW岡崎慎司がハットトリックをマークし、FW森本貴幸が代表初ゴール、MF本田圭佑がダメ押し弾で圧勝した試合後、岡田武史監督は恒例のテレビインタビューに応じなかった。

 トーゴ戦を中継したTBS系の関係者は岡田監督の対応に激怒した。約1億円とされる日本代表のテレビ放映権料には試合後、監督インタビューも含まれており「契約違反、契約不履行だ」と、損害賠償請求することを示唆。“ワガママ大王”と呼ばれたフィリップ・トルシエ監督時代にもなかった前代未聞の行動に日本サッカー協会の田嶋幸三専務理事がスタジアム内でTBS側と緊急会談するなど、不穏なムードが漂っていたが、実は伏線があった。

 同年10月3日に岡田監督はTBS系のサッカー番組に出演。「サポーター100人に聞いた岡田監督に聞きたくても聞けないこと」というテーマに指揮官は「今さら、そんなこと…」と不機嫌に応対している中、司会の元日本代表FW小倉隆史氏が1998年フランスW杯でカズことFW三浦知良をメンバーから外したことを聞くと「もう二度と出ねえ、この番組!」と笑顔を引きつらせながら吐き捨てたのだ。その上で指揮官は顔を赤らめながら「この11年間ずっと言っているけど、日本代表が勝つためにどうするかを考えただけ。それ以外のことは考えていない。もう1000回以上も言っている」と返答。岡田監督の“怒り”を察した小倉氏もうつむくしかなく、スタジオのムードは最悪だった。

 フランスW杯でカズのメンバー外は大きな反響となり、国内では岡田監督への批判が殺到。指揮官の家族も警護対象になるなど日本サッカー史に残る大事件だった。このためか、2度目の代表監督に就任して以降、カズに絡んだ質問が出ると語気を強めてキレ気味になることも多々あった。過剰な反応を見せることでカズらに対して“負い目”を感じている部分もあるようだ。

 番組の収録後、岡田監督は不満を隠さずに「こんな内容なら出なかった」と発言し、TBS側も「配慮が足りなかった」と謝罪。不機嫌のまま帰路に就いたというが、その直後の試合でまさかの報復に出た格好だ。インタビュー拒否は大きな話題となり、協会にもクレームの電話が殺到。そこで協会の広報部長とTBS側が騒動の経緯を説明する異例の記者会見を開き、両者の和解を表面的にアピールした。

 ちなみに岡田監督は早稲田大を卒業時にTBSの入社試験を受けて落とされている。講演会では毎回話題にする鉄板ネタなのだそうだが、両者の“マジ対立”は大きな話題だった。 (敬称略)