【プレイバック1994米国W杯#4】1994年の米国W杯ではグループリーグ中盤で大スキャンダルが起きた。優勝候補・アルゼンチン代表のスーパースター、ディエゴ・マラドーナが2戦目(6月25日)ナイジェリア戦後のドーピング検査で陽性となった。

 ドーピング検査では興奮剤の一種、エフェドリンなど5種類の禁止薬物が検出され、国際サッカー連盟(FIFA)は即時追放という厳しい処分を下した。

ナイジェリア戦でチームメイトの得点を喜ぶマラドーナ(1994年6月25日)
ナイジェリア戦でチームメイトの得点を喜ぶマラドーナ(1994年6月25日)

 6月30日、マラドーナは会見を開き「薬物を使った覚えはない」と自身の潔白を表明。さらにFIFAに対して「オレはハメられたんだ」「彼らはオレの足を切り落とした」などとFIFAを批判した。

 とはいえ、彼には以前から薬物使用の疑惑があり、FIFAからマークされていたという噂もあった。

 会見を終え、会見場の後で立ちながら自身のメモを確認していると、すぐ横で小柄な男が泣き叫んでいたのに気づいた。驚いたことに、それはマラドーナだった。

 彼は地元アルゼンチンのテレビ局のカメラに向かって両手を大きく広げ「オレは潔白だ」「信じてほしい」と涙をポロポロこぼしながら訴えていた。しかし、FIFAの決定が覆るはずもなかった。

 会見が行われた同日、アルゼンチンはブルガリアと対戦し惨敗。マラドーナというチームの中核を失ったアルゼンチンのダメージはあまりにも大きく、決勝トーナメントには進出したものの、1回戦でルーマニアで敗れ、大会を去ることになったのだ。

マラドーナ不在でブルガリア戦を迎えたアルゼンチン代表(1994年6月30日)
マラドーナ不在でブルガリア戦を迎えたアルゼンチン代表(1994年6月30日)