格闘王・前田日明氏(63)が、1日に心不全のため79歳で死去した師匠の〝燃える闘魂〟アントニオ猪木さん(本名・猪木寛至)の偉大な功績を称えた。

 猪木さんは心臓の難病「全身性トランスサイレチンアミロイドーシス」で闘病生活を送っていた。取材に応じた前田氏は「ついにか…と。なんだかんだ言って粘って、少しずつ回復してくれるのかなと思ってたんだけどね」と声を落とした。

 前田氏は1977年に新日本プロレスに入門。付け人を務めるなど猪木さんに師事し、1984年のUWF移籍を機に敵対関係になったが、心の奥底では常に師匠への敬意を抱いていた。

「入門して最初の1月くらいは立てなくなるまでスクワットするっていうのがあったんだよ。1週間くらいでようやく1000回くらいできるようになったのかな。その時たまたま猪木さんが俺を見て、リングの周りの選手がちょっとタラタラしてたから『お前らこんな細い新弟子でもこんなに頑張ってるのに何やってるんだ!』ってすごい怒ったんだよね。こんなんでも褒められたのかなって思って、その時が一番うれしかったんだよね」と、思い出を明かした。

 前田氏は猪木さんと藤波辰爾を「プロレスの天才」と評しており、なかでも〝燃える闘魂〟は絶対的な存在だった。

「空手界では大山倍達総裁、プロレス界ではやっぱり猪木さんだよね。『じゃあ君たち、アントニオ猪木と同時代に生きていなかったら何ができたの?』って言われたら、誰も何もできないじゃない。そういうことですよ」とキッパリ。

「猪木さんがいなかったら、前田日明もタイガーマスクも、リングスも修斗も総合格闘技もK―1もPRIDEも何もなかったよ。全ての始まりですよ」と、絶大な影響力を誇った師匠への特別な思いを明かした。

 79歳で生涯を閉じた猪木さんへ前田氏は「本当にお疲れさまでした、だよね。それしかないですよ」とメッセージ。運命に翻弄された師弟関係だったが、その奥底には確かな絆が存在した。