〝楽しい〟が引き寄せた3冠だ――。北京パラリンピックのアルペンスキー女子大回転座位(11日、国家アルペンセンター)で村岡桃佳(25=トヨタ自動車)が優勝。5日の滑降、6日のスーパー大回転に続き、今大会3個目の金メダルに輝いた。通算でも4個目となり、冬季パラリンピック日本勢単独最多となった。
 
「スキーをやることが義務みたいなところがあった」。前回の平昌五輪で金を含む5個のメダルを獲得したが、2019年春から陸上との二刀流に挑戦するまでは「すごくつらくて、苦しい」とモヤモヤが募るばかりだった。金メダリストの視線を浴びる中で、スキーを〝楽しい〟と思えなくなった自分がいた。

 自国開催の東京パラリンピック出場を目指して始めた陸上。スキーと異なる体の動きを学んだことで、バランス感覚が向上。技術面で学びを得た一方で、気持ちの面でも大きな変化が生まれた。

「雪に久々に上がったときにスキーの感覚というか、雪の上の感覚が楽しかったし、うれしかった。私にとってスポーツって勝つことやメダルを取るというのももちろんあるけど、それ以上に私のスポーツの原点はやっぱり楽しくやること。誰かと一緒に同じフィールドで戦えるのがうれしかった」

 スキーから離れたことで思い出した初心。「気持ちの面で1回リセットできた。またもう1回スキーを本当に心から楽しいと思えたのは本当に大きかった」と消えかけていた炎が再び灯った。

〝楽しい〟の意味を見出した村岡は強かった。女子100メートル(T54)で6位入賞を果たした東京パラリンピックからわずか半年。成長した姿を北京の地で十二分に発揮し、平昌五輪を上回る好成績を残した。
 
 12日には最終種目の回転が控えている。「最後はとにかく自分らしく楽しく滑ってきたい」。最後まで原点を貫き通し、笑顔で締めくくる。