最近、〝イケボビジネス〟が注目を集めている。イケボとは、イケメンを想像させるようなボイス、つまり〝イケてる声〟のこと。そんなイケボを持つ声優が、音声発話機能を搭載した調理用家電の音声案内を担当したところ、主婦や声優ファンの間で話題となり、商品の売り上げが伸びたという。そんなイケボが話題となっている背景には、SNSの動画配信も関係しているという。

 大手電機メーカーのシャープは昨年10月、音声発話機能を搭載した調理用家電の音声を人気声優やアニメ・ゲームのキャラクター、英語、方言など、様々な音声に変更できる音声カスタマイズサービスの提供を開始した。これは専用サイトから好きな音声を購入すると、ウォーターオーブン「ヘルシオ」や水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」の音声を変更できるという。

 これを使って音声を変更すると、お気に入りのイケボで「おはようございます。いい朝ですね。今日もおいしいご飯を一緒に作りましょう」などと、優しく話しかけてくれるのだ。

 サービス開始後、料理好きの主婦や声優ファンの間で話題となり、好きな声優やキャラクターの音声を聞くために商品を購入する人が増加。イケボが音声案内をしてくれることで料理にハマった人もいたという。

 声優・タレントプロダクション「オフィスCHK」の代表取締役社長・松井康年氏は、こうした声優を起用したビジネスにさらなる可能性を感じているという。
「家電に声優の声を取り入れるというアイデアは数年前からありましたが、技術面でなかなか実現できずにいました。しかし今はインターネットが普及し、音声をデータ化させることで家電に好きな声を取り込むことができるようになった」

 さらにイケボが注目されている要因について、こう分析する。

「TikTokなどで、顔を出さずに声だけで自作動画を投稿している人がいます。そういった人たちの中にイケボの人もいて、視聴者が『イケボですね』とコメントしたり、イケボ好きの人のために向けてハッシュタグにイケボをつけて動画を拡散する人が増えている。以前よりもイケボの存在が大きくなった」

「オフィスCHK」ではアナウンススクールや声優の養成も行っており、同社で研修を受けている生徒がシャープの空気清浄機「プラズマクラスター」や冷蔵庫、「ヘルシオ」の音声案内を担当したこともある。

 松井氏は「今は声優の卵ですが、いずれデビューして有名になったときに、“推し”の声が聞ける家電としてファンから需要が生まれると思っている。家電と声優の卵が一緒に成長していくようなイメージを持っています」と語る。

 松井氏は、声が聞ける家電の需要は今後も増えると見込んでいる。

「昨年、シャープさんが『声優家電』という言葉を商標登録したんです。今後はこの言葉とともに声優が起用された家電を多くの人に知ってもらいたい」

 一家に1台、イケボが案内をしてくれる調理用家電が置かれる日は、近いかもしれない。