【ココロとカラダのニンゲン行動学】工場で不良品を発見するという監視の作業では、注意力の持続のためにペパーミントオイルが活用されている。

 ペパーミントオイルはまた、スポーツや車の運転で肉体的反応や注意力をアップさせ、疲れを感じにくくする効果がある。

 ではスポーツの場合に具体的にはどれほどの効果が表れるのだろうということで、2001年に行われたのが次の研究だ。

 米国・ウェストバージニア州にあるウィーリング・イエズス大学のB・ローデンブッシュ氏らは、トラック競技、サッカー、バスケットという走ることが重視されるスポーツを行っている選手に注目。男女20人ずつを選び、以下の4種類のパフォーマンスを行ってもらった。

 利き手による握力測定、400メートル走、腕立て伏せを時間制限なしで何回できるか、バスケットボールのフリースローを20回行い、うち何回が成功するか。

 それぞれ2回行うが、1回は、ペパーミントオイルをたらした紙を鼻の下に貼り付けて、もう1回は何も匂いをつけていない紙を鼻の下に貼り付けて行う。

 すると、技術力だけであり、疲労とはほぼ無関係のフリースローは、ペパーミントオイルのある・なしとは無関係だった。

 握力と腕立て伏せについては、ペパーミントオイルがあると肉体的反応が早く、かつ疲れにくかった。

 そしてとんでもない効果があったのは400メートル走だ。

 ペパーミントオイルなしで、平均80・40秒だったのが、ありでは平均79・58秒。0・82秒も短縮されるのだ。

 さあ、大変。もし100メートル走であったなら、単純に考えて0・2秒は短縮され、中には夢の9秒台を実現させられる選手が現れることになる。

 しかし、よく考えると400メートル走とは、選手がラストでよれよれになりながらゴールする競技だ(有酸素運動)。

 選手がよれよれにはならない、100メートル走や200メートル走(いずれも息を止める、無酸素運動)とは事情が違う。つまり最後のよれよれ部分においてペパーミントオイルが疲労を感じさせにくいという効果を発揮し、びっくりするような時間短縮が実現しているかもしれないのだ。400メートル走、一度試してみては?

 ☆竹内久美子(たけうち・くみこ)京都大学理学部卒業後、同大学院で日高敏隆氏のもと、動物行動学を学びエッセイストに。「そんなバカな! 遺伝子と神について」(文春文庫、及び電子書籍)で講談社出版文化賞科学出版賞受賞。最新刊「フレディ・マーキュリーの恋 性と心のパラドックス」(文春新書)が発売中。