全日本柔道連盟は5日の強化委員会で、ドーピング規定違反物質を含む市販の風邪薬を服用し、2月のグランプリ大会(ドイツ)を欠場した女子78キロ級の緒方亜香里(24=了徳寺学園職)と同70キロ級の田知本遥(24=ALSOK)に警告処分を下すことを決定。指導が不十分だったとして南條充寿監督(42)や女子シニアのコーチ、所属の両監督を注意処分とした。

 2人は世界選手権(8月、カザフスタン)の代表選考会を兼ねた全日本選抜体重別選手権(4月4~5日、福岡国際センター)にも予定通り、出場できる。一時は2016年リオ五輪出場も絶望視されていたが、山下泰裕副会長(57)は「本人が警告を受けたことよりも、全日本の監督やコーチ全員が注意を受けたことが本人的にもグッとくる部分がある」と判断を支持した。

 ただ、うっかりミスで大事な国際大会に穴をあけてしまったことは大きな失態。減量失敗による欠場なら即強化指定解除となるだけに「処分が軽い」とみられても仕方がない。実際、委員会では「減量に失敗した選手が、処分が軽いからと風邪薬を使ったと申告する可能性もある」と指摘され、処分を重くすべきとの意見も出された。

 なぜ“軽処分”で済ませたのか。大会が「グランプリ」だったためだ。ある強化委員は「これが世界選手権なら警告じゃ済まされない」と断言した。また、使用された薬は興奮作用のある禁止成分メチルエフェドリンを含んでいた。血中成分は8時間で半減するとされ、筋肉増強などの効果もないことから世界アンチ・ドーピング機関(WADA)も抜き打ち検査では対象外としている。

 しかし、五輪では選手村の開村後に「常に使用禁止」のカテゴリーに格上げされる。五輪や世界選手権だったら大問題で“温情裁定”とはならず、選手や指導陣には処分以上の徹底した再発防止策が求められる。