女子テニスの世界ランキング2位・大坂なおみ(23=日清食品)の「うつ告白」が伝統を変えようとしている。

 4大大会の全仏オープン(パリ)で会見拒否を表明した大坂は、その理由が〝心の病〟だったことをSNSで公表。大会を棄権し、現在は米ロサンゼルスの自宅で休養している。

 だが、初戦勝利後に会見場に姿を現さなかったとして大会主催者は予定通り罰金1万5000ドルを科すことを決定。先日は米人気アプリ運営する会社が〝肩代わり〟を表明しているが、そもそも現時点で罰金を払う必要性はあるのだろうか?

 スポーツ仲裁裁判所(CAS)の仲裁人を務める早川吉尚弁護士(52)は「やったことと制裁のバランスが欠いている場合、スポーツ仲裁では比例原則違反として制裁が取り消された例が過去にはあります」とした上で「ただ、今回の事案は比例原則以前の話です」と説明する。

 早川弁護士は「大坂選手が言っていることが真実だとすると」と条件を付けた上で、こんな見解を語る。

「例えば試合で足を滑らせて頭を打って意識が戻らなくて記者会見に出られなかった場合は当然、罰金の対象にはなりません。会見に出る契約は選手が物理的に会見に出られる状況にあることが前提。つまり、メンタルの病気を抱えている大坂選手は物理的なケガで会見に出られないケースと一緒なので、制裁金は取り消されることが望ましいと僕は思っています」

 ただ、大坂の一連の行動について「なぜ最初から公表しないのか」「告白するタイミングがおかしい」「後出しジャンケンだ」との批判も出ているが、早川弁護士は「うつ病を伝えること自体が物凄い負担です。どのタイミングで告白したかは関係ない話で、客観的事実だけが重要」と話す。

 一方、全仏オープン主催者は「大坂選手の健康状態について確認しようとしたが、うまくいかなかった」と説明。大坂も診断書を提出していない。そのため「主催者も事前に病気のことは知らされていなかったので仕方ない。責められるべきではない」(早川弁護士)という。

 全仏オープンは現在も開催中だが、果たして罰金の行方はどうなるか。