女子テニスの世界ランキング2位・大坂なおみ(23=日清食品)の「うつ告白」が大きな波紋を広げている。

 4大大会の全仏オープン(パリ)で会見拒否を表明し、その理由が〝心の病〟だったことを公表。大坂はSNSで「2018年の全米オープン以降、長い間、うつに悩まされ、その対処にとても苦しんできました。(中略)私は人前で話すのが得意ではなく、メディアに向けて話す前は大きな不安が押し寄せます。すごく緊張し、常に最適の答えを導き出すことがストレスになっています」と吐露し、欠場を決めた。

 現在は米ロサンゼルスの自宅に戻って休養中。復帰時期が懸念されるが、大坂陣営は「東京五輪で金メダルを取る」という目標にブレはない。とはいえ、開幕まで残り50日を切った状態で「うつ」を克服することは可能なのか?

 うつ病と闘うスポーツ選手を数多く診察している北本心ノ診療所(埼玉・北本市)の岡本浩之院長(42)は「そこまで心の傷が深くない場合は、早い人で1、2週間という短期間で回復することがあります。しかし、長い間ずっと抱え込んでいる場合は半年から年単位で回復させていく必要があります」と話す。その上で、現在の大坂に関しては「2018年以降という彼女の言葉通りなら、かなり長い期間抱えて苦しんでいます。1ファンとしては素晴らしいプレーを早く見たいですが、復帰を急ぎ過ぎてすぐ再発してしまえば回復に余計時間がかかります。年単位の時間をかけるつもりで、じっくり回復させていただきたい」との見解を語った。

 年単位となると東京五輪は絶望的。しかし、岡本院長は「難しい判断ですね」と話し、短絡的な決断を下さない。

「病状だけを考えると出場を見送った方がいいですが、大きな大会に出るなというのはアスリートに取って死刑宣告くらい重いことです。大坂選手にとって五輪がかなり大きな存在であるなら、安易に出ない方がいいとは言えません」

 実際、他の病院で「競技やめたらいいだけじゃない?」「試合に出なければいいでしょう?」と言われたアスリートたちが来院。「正論だけど簡単には諦められない」「諦めたらこれまでの自分を否定することになる」と悩んだ末に岡本院長を訪れるという。自身も4度のうつ病経験がある同院長のアドバイスは選手の心に響くようだ。様々な状況を踏まえ、岡本院長は「今から出ないと決めつけず、ギリギリまで状態を見極めて判断するのがいいだろうというのが私の考えです」と結論付けた。

 東京五輪出場のために日本国籍を取得した大坂。今後の長いテニス人生を見据え、果たしてどんな決断を下すか。