4大大会にケイが帰ってきた。27日に開幕した全仏オープン(パリ)の男子シングルス1回戦で、日本のエースで世界ランキング35位の錦織圭(30=日清食品)が同34位ダニエル・エバンズ(30=英国)に1―6、6―1、7―6(7―3)、1―6、6―4で勝利。396日ぶりの4大大会白星で2回戦に進出したが、いきなり3時間49分フルセットの死闘となった。専門家が指摘する「錦織らしさ」の意味とは――。

 今大会は右ヒジの故障と新型コロナウイルス感染などで長期離脱していた錦織にとって、昨年8月の全米オープン以来の4大大会。その初戦から壮絶な試合が繰り広げられた。この日の会場ローランギャロスは小雨模様。気温12度で強風という悪コンディションの中、序盤から水を含んだクレー(赤土)コートに足を取られ、仕掛けたネットプレーはことごとく不発。わずか27分で最初のセットを落としたが、すぐに絶好調時のキレを呼び戻した。マックス・ミルヌイ・コーチ(43)と取り組むサーブ&ボレー、相手をラリーで追い詰めてから前に出る効果的なネットプレーが決まった。得意のバックハンドのリターンエースも飛び出し、第2、3セットを連取。しかし、やや疲れが見えた第4セットは一方的な展開で奪われ、ファイナルセットまでもつれ何とか勝ち切った。

 この試合を見たGAORAテニス中継解説者の佐藤武文氏(49)は「良くも悪くも錦織選手らしさが出ました」と分析。良い部分は「勝負師らしさ」だという。
「ここぞという場面での大胆な攻め。相手のセカンドサーブで前に入ってバックのいいリターンを打ち、ボレーを決めてマッチポイントを握ったシーンはさすがでした」

 一方、悪い部分とはファンの間でもよく知られる「長時間試合」だ。佐藤氏は「もらった、という展開から自分のミスで流れを悪くする。最後まで見ている側をヤキモキさせるんです」と苦笑いする。4大大会でフルセットまでもつれ、トーナメント序盤で体力を疲弊させるのは“錦織あるある”だ。

 もちろん錦織本人は百も承知。その打開策として取り組んでいるネットプレーも「いい意味での錦織らしさ」だという。

「今やっているプレーはまだ発展途上ですが、確立すれば絶対に時間短縮、体力温存につながる。そのために取り組んでいます。30歳から新しいスタイルに挑戦する錦織選手にとって、大きな武器になるはずです」

 一日でも長くプレーしたいと願う錦織にとって、より“時短”とすることが生命線。その理想を追い掛け、世界73位のステファノ・トラバリア(28=イタリア)との2回戦でもファンをハラハラさせる奮闘劇を見せてくれるはずだ。