「みそぎ」の達成度は――。競泳のジャパン・オープン初日(4日、東京アクアティクスセンター)、男子400メートル個人メドレー決勝は不倫問題で活動停止処分を受けていた東京五輪代表の瀬戸大也(26=TEAM DAIYA)が4分12秒57で優勝した。144日ぶりの実戦を制し、インタビューではこれまで沈黙を貫いていた自らの不貞行為についても口を開いた。リスクマネジメントの専門家は本人の謝罪や反省を評価する一方で、世間の批判を鎮静化させた〝2人の救世主〟の存在を指摘した。


〝出直しレース〟は圧勝劇だった。瀬戸は最初のバタフライでトップに立つと、背泳ぎでもリードを広げ、後半の平泳ぎ、自由形はペースを落としながらも順位を下げることなくフィニッシュ。予選、決勝ともに同学年のライバルで同種目リオ五輪金メダルの萩野公介(26=ブリヂストン)を全く寄せ付けなかった。

 昨年9月に自身の不倫行為が報じられ、日本水連から年内活動停止処分を下された。これまで沈黙を貫いていた瀬戸はレース後「家族をはじめ多くの関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことと、日ごろより応援してくださった方々にがっかりするような行動をとってしまい、本当に申し訳ございませんでした」と謝罪し、深々と頭を下げた。

 続けて「いかに自分が恵まれた環境で競技を続けられていたか身に染みて感じましたし、応援してくださる方がいたから今の自分がいるということも再認識できました。そういった立場を自覚していなかった自分がいたから軽率な行動をとってしまったと思っております」と神妙な面持ちで反省の言葉を口にした。

 この日の瀬戸の対応について、危機管理を専門とするエイレックスの畑山純氏は「不倫について迷惑をかけた方々に謝罪し、おわびの気持ちが伝わるような受け答えだったと思いました」と評価した。昨年は似たようなニュースで世間から大バッシングを浴びた芸能人もいたが、アスリートに求められるのはあくまでも結果。「ネットやSNSを見ても『どん底に落ちた状態から優勝できる精神的な強さはすごい』というコメントが多くありました。騒動前を100としたら、そこからガクンと落ちて0になったとしても50とか60には戻ってきていると思います」と分析する。

 畑山氏は〝不倫騒動〟のダメージは結果的に最小限にとどまったとみている。その理由に妻・優佳さん(25)の存在を挙げ「不倫報道から早い段階で取材等で『一緒にやっていきます』とのメッセージを出しましたよね。当人同士の問題なので、奥さんがそう言うなら…という印象になったと思います」と指摘した。

 一方で、瀬戸にとっては望外の〝追い風〟があったことも見逃せない。くしくも、この日は東京五輪大会組織委員会の森喜朗会長(83)が自らの失言に対する謝罪会見を行ったが、反省の色が見られず世間の怒りの火に油を注いだ。畑山氏も「森さんが強烈すぎて(瀬戸選手の話題が)かすんでしまう感じはありましたよね」。他の話題をすべて吹き飛ばしてしまう〝失言王〟の破壊力に目を見張ったほどだ。

 その瀬戸には、東京五輪に向けて明るいニュースがある。複数の関係者によると、優佳さんが民放テレビ局で五輪本番の水泳競技でキャスターを務めることが内定したという。夫婦関係を完全に修復して大舞台で〝共演〟を果たせば、さらなるイメージ回復も夢ではない。瀬戸は復活劇を献身的に支えた夫人について「奥さんもサポートするよと言ってくれた。こんな自分でも本当にありがたい」。今後は泳ぎのみならず、夫婦での活躍にも注目だ。