究極を目指す人間の境地とは――。体操の東京五輪代表選考会を兼ねた全日本選手権最終日(18日、群馬・高崎アリーナ)、男子種目別決勝は五輪個人総合2連覇の内村航平(32=ジョイカル)が鉄棒で1位の15・466点をマーク。大舞台に向けて、また一歩前進した。

 内村はこの日もH難度の大技「ブレトシュナイダー(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)」に成功。スコアは予選(16日)の15・166点を上回り、演技後には「体力的にしんどかったけど、演技構成自体が体に染み込んできた」と手応えを口にした。そのキングも32歳。最近は体力面に不安を抱えながらも、1種目に専念したことで逆に研ぎ澄まされた感覚もあるという。

 内村は「スピリチュアルな話になってしまいますけど(笑い)」と前置きした上で「〝器具の声〟を聞きながらその日の自分の体調に合わせてやるという感覚。器具とかみ合ったときは非常にいい演技ができるし、合わなかったらソッポ向かれる。そのへんは鉄棒とうまく対話しながら、自分の体を合わせていって。そこは、今までになかったことですね」と打ち明けた。

 実は、つい最近も似たような言葉を発していたアスリートがいる。フィギュアスケート男子で五輪2連覇の羽生結弦だ。先月の世界選手権(ストックホルム)で練習を行った際に「氷としっかり対話できたと思う」とコメント。集中力を極限まで高めて競技に臨む超一流選手ともなれば、おのずと表現の内容も似てくるということか。

 その羽生はブレトシュナイダーに取り組む内村について「刺激になっている」。内村も4回転半ジャンプに挑む羽生に対して「似ている部分がたくさんある」と語っている。今後も五輪の舞台という共通の目標に向かって、互いに〝切磋琢磨〟していくことになりそうだ。