キャリア終盤の安藤美姫が逆転で全日本V! ライバル真央から女王奪回「あのシーズンが最強」

2021年12月20日 07時00分

大喜びのモロゾフコーチ(下)を笑顔で受け止める安藤美姫(2010年12月26日、長野・ビッグハット=東スポWeb)
大喜びのモロゾフコーチ(下)を笑顔で受け止める安藤美姫(2010年12月26日、長野・ビッグハット=東スポWeb)

【フィギュアスケート全日本選手権・回顧録3】(2010年12月23~26日、長野・ビッグハット)

 女子世界初の4回転ジャンパー・安藤美姫は充実期を迎えていた。出場6大会で世界選手権制覇を含むV5。後年、自身も「あのシーズンが精神的にも技術的にも最強だった」と振り返るように、峠を越えた感のあった安藤が見事な〝V字回復〟を遂げたシーズンだった。

 23歳。04年を最後に全日本Vから遠ざかり、逆にライバル浅田真央が前年まで4連覇。数々の名勝負を繰り広げた真央とは全日本9度目の対決だったが、それ以上に安藤は東京で開催する世界選手権(※東日本大震災によって開催地変更)の出場権を得ることが目標だった。

 ショートプログラム(SP)では難度を落とし、リスクを最小限にする作戦に出た。64・76点と上々の得点。しかし、真央はその上をいった。今季、一度も成功していないトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を構成に入れて66・22点をマークして首位。安藤とは反対に〝冒険〟に出たのだ。

 2位発進の安藤には勝算があった。フリー勝負になれば大丈夫――。その確信もあり、ニコライ・モロゾフ・コーチの指示で安全策を取ったのだ。実際、GPシリーズ3戦ともフリーで首位。真央との1・46差は、あってないようなものだった。

「今年一番、緊張しておなかが痛くなった」。重圧はのしかかったが、氷上に出ると緊張は解け、自信がわいた。グリーグの名曲「ピアノ協奏曲イ短調」に乗って、世界屈指の高速ジャンプと妖艶なスケーティングを披露。後半に5つのジャンプを詰め込んだ構成はSPとは正反対の〝攻め〟の姿勢だった。フィニッシュすると両手で力強くガッツポーズ。フリー1位の137・58点をマークし、トータル202・34点で真央を逆転。6シーズンぶり3度目の日本一に輝き、モロゾフ・コーチと抱き合った。「二重丸をあげてもいいかな」。真央に勝ったことよりも、納得する演技ができたことがうれしかった。

 10年バンクーバー五輪後は1年休養を考えた。しかし、スケートへの向き合い方を変えて挑戦することを決断。それが実を結び、キャリアハイの成績を挙げることができた。昨年、安藤は当時を懐かしそうに振り返った。

「練習を詰め込むのではなく、スケートがしたいと思った時にリンクに行った。自分に正直になったのが良かったのかな。やっぱり追い込むのは私には合わない。嵐のような性格なので(笑い)」

 数々の名勝負を繰り広げた安藤と真央。03年からの10年間で両者が優勝したのは9回。現在は別々の道に進んでいるが、互いのプライドを懸けて戦った全日本の思い出は今も2人の間にある。

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