フィギュアスケート全日本選手権(長野・ビッグハット)のアイスダンスは26日、出場5組によるリズムダンスが行われ、注目の〝かなだい〟こと村元哉中(27)&高橋大輔(34=ともに関大KFSC)組が67・83点をマーク。71・74点で首位の〝夫婦カップル〟小松原美里(28=倉敷FSC)&ティム・コレト(29、小松原尊)組に次いで2位という好成績を残し、27日のフリーで優勝を狙う。

 デビュー戦となった先月のNHK杯では多くの課題を残した。今大会は細かい部分でマイナーチェンジを図り、高橋は「大きく見られるように」と衣装も一変。目立ったミスなく終えた村元は「変えたところが多かった。もう少しスピードが出るようなトランディションだったり、もう少し動きが大きく見せられるような変更をたくさんしてきた。それがうまく、このような状況でもまとめられたのは良かったと思います」と満足げに語った。

 充実の言葉の中にある「このような状況でも…」というフレーズ。この日の2人のメンタルを如実に表したものだった。試合前の公式練習中、村元に悲劇が襲った。フィンステップの最中に後ろに転倒し、高橋の全体重が左足にのしかかった。激痛の中で氷上に横たわり、しばらく立ち上がれなかった。周囲が騒然とする中で「ヤッバーって感触」(村元)、「生きた心地がしなかった」(高橋)目の前が真っ暗になった。決戦を5時間後に控えながら、カップル結成最大のピンチを迎えたのだ。

 しかし、2人が大会前に掲げたテーマが救った。村元は言う。

「2人の今大会の目標は『攻める』だった。その部分は、できたかなと思っています」

 不測の事態の中、メンタルが共倒れしてもおかしくない状況だったが、演技が始まった瞬間にスイッチオン。左足の不安を吹き飛ばすほど、とにかく攻める演技に徹した。高橋は「痛いはずなのに、本番は何事もなかったかのようにパフォーマンス。かっけぇーなって感じながら滑っていました」とパートナーに舌を巻いた。さらに、高橋は「技術的なことは短期間だと難しい。表現という部分でなんとかしなきゃ、と。練習の時から思いっきりやってきたので、それが演技としてうまく生かせたと思います」と自画自賛した。

 村元の左足にはいささかの不安は残る。だが、27日のフリーも「攻める」テーマは忘れない。

「滑るなら滑るで思いっきり、全力を尽くしてやっていきたい」

 その気持ちにブレがない限り、かなだいは明日も銀盤で輝くことができるだろう。