【注目! 令和の健康新技術】自分の健康状態を把握できるヘルスケア指標「身体年齢」が注目を集めている。実年齢より大事なこのパーソナルスコアはどのようなものなのか。「筋肉」の量がカギを握っているというが…。先週に続き、詳しく見ていこう。

「身体年齢」は、筋力や平衡感覚から人間のフィジカル(身体的)な能力を計測した、実年齢とは別の年齢だ。開発したのは、ヘルスビット(東京都千代田区)というベンチャー企業である。

 実用的な指標であることを目的にしており、握力や片足立ちなどの簡単な計測結果からスコアを算出できる。計測のために特別な機器や技術は不要で、チェックするのは記入シートにある5項目のみと簡単だ。

 医学的な詳細については省略するが、特色は筋肉に着目したことだ。筋肉量は、健康と大きな関連がある。体に筋肉がついている人は、血糖値データや内臓脂肪データが良好な傾向があることが判明している。

 腹囲からは「WHtR」というウエストと身長の比率が求められ、プロポーションの指標となる。WHtRが0.5を超えてウエストが身長の半分以上になると早死にリスクが増加するとされる。

 新潟大学は、体重あたりの握力と閉眼片足立ちの成績が悪いほど2型糖尿病の発生リスクが高くなるという論文を発表している。握力と閉眼片足立ちで糖尿病リスクが評価できることを意味している。

 握力は筋力と、また閉眼片足立ちは運動機能と関連している。短い時間しか片足で立っていられない人は、運動機能が低下している可能性がある。

「スコアが、その場で出るのが大きいんです。一般に健診結果などは数日後にならないと結果が出てきません。しかし、計測したその場で数値化されると行動変容を生みます。例えば、意識が変わって酒を飲んだ後のラーメンを食べないようになるんですね」と、開発したヘルスビットの部坂英夫社長は語る。

 身体年齢計測のためにチェックする項目は、いずれも日常生活の中で運動したり食生活を改めたりすることによって改善可能なものだ。計測結果で、すぐに「どうしたらよいか」がわかるのである。スコアが出ることで意識付けされるだけで、スコア改善のきっかけとなるのだ。

 身体年齢計測を健康対策で取り入れたある会社では、初回計測の半年後、腹囲85センチ以上だった男性の8割に腹囲の減少が見られたという。システム利用により会社には金銭的負担が生じるが、病気欠勤などの減少により全社的な生産性向上につながっているそうだ。

 次回はこのシステムが実際にどのような場面で運用されているかに焦点を当てる。