死者数6100人で済むのか――。東京都の防災会議地震部会が25日、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直し、死者数は前回の9600人から大幅に減り、最大6100人と試算したが、防災専門家からは「想定が甘すぎる。ケタが違う」との声が出ている。

 都によれば、M7・3規模の都心南部直下地震で、最も被害が大きいとされる冬の午後6時を想定。建物の全壊・消失棟数は約19万、死者数は6148人で、2012年時と比べ、建物被害は約11万棟減少、死者数は3500人減少した。これは建物の耐震化や不燃化などの対策が進んだためとしている。

 元東京消防庁消防官で一般社団法人「日本民間防衛連合会」の金子富夫代表理事は「たった10年で減災したなど、あり得ない。木造住宅密集地域の不燃化対策もまだまだで、完結していない。東京消防庁や警視庁、自衛隊は都内の災害環境を知っているので、この数字にはとても納得できないと思う」と指摘する。

 政府の中央防災会議でも13年に首都直下地震で、死者数は首都圏全体で最大約2万3000人と想定しているが、甘く出るのは数値化できないケースがあるからだ。

「限られた範囲内の被害のみで、災害環境を左右するネガティブファクターや地域事情が入っていない。山手線の転覆やNBC(核・生物・化学兵器)災害の特殊現場などは、被害が数知れずに想定できていない」(金子氏)

 都では火災旋風や車両脱線、石油タンクの爆発、有毒ガスの被害などで死傷者が大幅に増加する可能性を想定しているものの、死者数には組み込まれていない。地震部会長の平田直東大名誉教授は「想定死者数は減ったが、6000人もの犠牲はあってはならない。着実に対策を進めることが必要だ」と地域防災計画を改定し、引き続き防災意識向上が必要としている。

 金子氏は「いずれにしても東京の場合は火災対策です。火災件数に対して、圧倒的に消防車両が不足しているし、市民消火隊の攻撃的な消防活動は無理。こんな甘い想定を出して、都民の危機意識が落ちることの方が怖い」と懸念を示した。