ロシアのウクライナへの軍事侵攻は膠着状態が続く中、ロシアのプーチン大統領が侵攻直後、核戦力の使用をちらつかせていたことで高高度電磁パルス(HEMP)攻撃に踏み切る危険性が心配されている。HEMPは人体に影響はないとされるが、都市機能を完全にマヒさせる電磁波攻撃で、使用すれば第3次世界大戦に突入必至の危険過ぎる兵器だという――。
ロシアがウクライナへの攻撃を始めたのは2月24日のこと。当初は「数日で全土掌握」を目指していたとみられるが、ウクライナ軍の徹底抗戦に遭い、戦闘状態が各地で続いている。3日に2回目の停戦交渉が行われたが、一般市民の避難のため一時的に交戦を停止することで合意するにとどまった。来週再び交渉が行われる予定。
米国防総省の高官によると、ロシア軍が発射したミサイルは480発以上。フランスのマクロン大統領はツイッターで、プーチン氏が攻撃をやめる気がないことを明らかにした。その上で「我々は最悪を避けなければならない」と続けた。
「最悪」といえば核使用だろう。先月28日、ロシア国防省はプーチン氏の指令を受け、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や太平洋艦隊など核戦力を保有する部隊が特別態勢に入ったと発表した。核使用というと、太平洋戦争で長崎や広島に落とされた原子爆弾のような攻撃を連想しがちだが、HEMPは地上から数十~数百キロの上空で爆発させる兵器だ。
元韓国国防省北朝鮮分析官で拓殖大学主任研究員の高永喆氏は「HEMPは上空での爆発で強力な電磁波が発生し、過負荷状態で電子機器、携帯電話、スマホ、パソコンは壊れ、自動車も地下鉄もすべて止まり、都市機能が完全にマヒします。北朝鮮がアメリカに対し、HEMP攻撃すると吹聴し、話題になった」と指摘する。
もともとアメリカが1962年に北太平洋の上空400キロで行った核実験で、爆心から水平距離で1300キロ以上離れたハワイで電子機器が壊れる被害が確認された。以後、核保有国は研究を進め、影響範囲を制限できる低~高レベルのHEMPの開発に成功しているとみられる。北朝鮮はロシアの技術をもとに大陸間弾道ミサイルへの搭載を可能にし、アメリカへのHEMP攻撃が可能になったとされている。
HEMP使用には、ロケット開発を通じて軍事技術にも精通する実業家の堀江貴文氏も3日、自身の公式ユーチューブチャンネルで「ほとんどの電子機器にはマイコンが搭載されているので、電磁波で無力化され、壊れる。電力網が寸断され、電子機器に頼り切っている現代社会はマヒする。戦術核をキエフの上空で起こすことはある」と言及した。
また高氏は「HEMPでは、爆風や熱線など人体に直接の影響はない」と指摘する。そのため攻撃を受けた都市は、建物が破壊されるようなことはなく、焦土と化す凄惨な光景にはならないが、前述のように都市機能をマヒさせるため、その後の影響は計り知れない。
電気、水道、ガスなど人間が生きていくために必要なライフラインが遮断され、結局は多くの人命が奪われることになってしまう。
高氏「HEMPは、攻撃時に人命を奪ったりはしないので、核兵器の中では使いやすいともいえるが、本当に使用に踏み切れば、北大西洋条約機構(NATO)や英米からの反発、報復は必至で、ロシアにとっては共倒れになる可能性が高い。それこそ第3次世界大戦に踏み切るようなもの」という。
他の核兵器同様、事実上、使えない兵器で、抑止力の材料とみているが、プーチン大統領が暴走しないことを祈るばかりだ。












