【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】新型コロナウイルス禍の中国で、マスクと並び深刻になっているのが生理用ナプキンの不足だ。

 国の総力を挙げマスクの増産が進められ、もともと生理用品を作っていた工場でも急きょ、マスクの生産を始めている。マスクと生理用品は原材料や作業工程が似ているのだ。

「生理用品の工場が全部マスク生産に切り替えたわけではないが、人々の間で不安が広がり、SNSで『生理用品用の原料が全てマスクに使われるため、今後数か月は生理用ナプキンが不足する』というデマが流れ、次第に拡散していった」とは上海在住駐在員。

 結果、マスクに続き、生理用品の買い占めが中国全土で起き始めた。

「この機に乗じて悪質な値上げをする店もすでに出てきている。また買い占めは香港や台湾など他の中華圏にも飛び火。生理用品が空になったスーパーの棚の写真などがSNSに投稿されている」と同駐在員。

 中国メディア「毎日人物社」は“コロナ震源地”湖北省の最前線で奮闘する女性医療スタッフ10万人以上の間で生理用品が慢性的に不足していると報じた。医者の半数以上、看護師の9割以上が女性で、最低でも毎月60万枚の生理用ナプキンが必要なのに、買い占めもあって足りないという。

 ある女性スタッフがSNSで窮状を訴え、支援を求めたところ、中国各地からマスクや防護服などと一緒にナプキンが届くようになったという。また「生理用品が不足してますが、第一線で闘う女性に譲りましょう」と、現地メディアも国民に呼び掛けている。

 もっとも、感染拡大が深刻なエリアで医療作業にあたる女性たちは、一度防護服を着たら容易に脱げず、ナプキンを小まめに取り換えられない。肉体的・精神的ストレスも相当だ。同メディアによれば、湖北省に次いで感染拡大が深刻な浙江省から派遣された応援ナースは4時間連続で従事し、防護服の下部が血まみれになっていたという。

「この報道を目にした中国の人々からは『白衣の天使、いや戦場の女神だ』と称賛の声が上がっている。コロナとの闘いは、血みどろの様相になってきた」と駐在員は語る。ちなみに中国の人口は、昨年末までに14億人を突破し、うち女性は6億8478万人。

 日本で暮らす中国人などが、転売用に生理用品の爆買いを始めるのではともささやかれている。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。