新日本プロレス11日の千葉・東金大会で「ユナイテッド・エンパイア」のグレート―O―カーンがミスターこと永田裕志(54)との初シングルマッチで歴史的大勝利を収めた。

 オーカーンは永田からデビュー30周年記念試合の対戦相手として指名を受け、東金のリングに降臨した。そもそもG1クライマックスから卒業している永田と、事実上の今年度G1覇者であるオーカーンとでは実力差が歴然。本来ならば相手にする義理もないはずだが、何やら戦前から〝師匠ヅラ〟してくる永田のたわごとに付き合い、シングル戦まで受諾してあげたその優しさは、マザーテレサもビックリと言っても過言ではない気がする。

 オーカーンが本気を出せば、ミルコ・クロコップように21秒で永田を葬ることも可能とささやかれている。しかし、そんなことをしては東金市民は悲しみに暮れてしまう。オーカーンはサンダーデスドライバー、雪崩式エクスプロイダーといった大技もあえて受け、試合の見せ場を増やしていく。その慈悲深さは北半球を駆け巡った。

 いつまでも師匠気分の永田は勝てるとでも勘違いしたのか、バックドロップを狙ってくるが、さすがにそれは許さない。ついに現実を分からせる時が来たと判断したオーカーンは、正拳突きを叩き込み勝負に出る。掟破りのエクスプロイダーで全知全能ぶりを見せつけると、最後は一撃必殺のリストクラッチ式エリミネーターで処してみせた。永田の栄光時代はいつだよ…ミスターIWGPの時か? 俺は…俺は今なんだよ!!

 試合後のオーカーンは「これがレスリングじゃ。これがストロングスタイルじゃ。そうだろ、永田? あの長州力殿も『新日本を支えてほしい』と言い〝平成のミスタープロレス〟武藤敬司も余を称えた。戦ってもいないのにだ。そして今宵〝ミスターIWGP〟の永田裕志を処刑し、余の実力を認めさせた。アマもプロも支配したこの余が、令和のミスタープロレスである!」と高らかに宣言。

「そのミスタープロレスを作り上げた要因の1人として、永田裕志。余が築くデッカイ城の礎の墓標を貴様の名前を刻んでやる。誇りに思え」と、偉大なる支配者の器を改めて証明した。

 身に覚えもないのにいつまでも師匠ヅラをされてオーカーンもさぞ迷惑だったに違いない。「例えばの話、例えばだ、例えば…。プロレス嫌いのレスラーがいたとして、そいつはなんでプロレスをやってると思う? もしかして『プロレスラーになれば、こんなにいいメシ毎日食えるぞ』って食わせてもらったり、練習場に車で送り迎えしてもらったり、テメーの試合があって次の日地方へ行くって時でも残って練習付き合ったり、そういう恩を感じたら、恩返しでプロレスラーになる…そういうこともあったりすんのかな?」と唐突に独り言をしゃべり始めたが、是非もなし。

「いや、知らねぇけど。まあ、何が言いたいのかよくわかんねぇ。ちょっと、頭打ち過ぎたな…」と、試合でもコメントでも太宰治ばりのサービス精神を発揮するオーカーンは、ミスタープロレスどころか人間国宝に認定されるべきと言っても過言ではない気がする。