新日本プロレスのエース・棚橋弘至(45)が、八面六臂の働きで下半期に巻き返す。3年連続負け越し中の「G1クライマックス」Cブロックでは、ここまで1勝1敗と上々のスタート。4年ぶり4度目の祭典制覇を果たした上で、上半期に団体と国境、そして世代の枠を超えて広げに広げた因縁の清算に動く。

 Cブロックから頂点を狙う棚橋は、24日大田区大会で内藤哲也から5年ぶりの勝利を収めるなど前半戦を終えて1勝1敗。「みんなが一番心配しているヒザの状況も非常にいいですね。(4ブロック制のため例年より)公式戦の数が少ないという緊張感はあります。それが控室の空気をよりピリッとさせている感じですね」と手応えを感じ取っている。

 G1では史上最多となる通算92勝、蝶野正洋に次ぐ歴代2位タイの3度の優勝実績を誇る。しかし、2019年以降は苦戦が続き、昨年まで3年連続負け越しの屈辱を味わった。

「毎年優勝を目指して出ているわけですから。4年連続負け越しはG1辞退という〝棚橋ルール〟があるので。もうリーチ、かかってるじゃないですか。だいぶ切羽詰まってますね」

 最高峰リーグ戦を制すれば、一躍トップ戦線に再浮上できる。その一方で「今年は全方位的に宣戦布告してますから。棚橋の下半期に最もふさわしい四字熟語は『八面六臂』です。八面六臂Tシャツを作りますよ」と、積極的な〝外交〟にも意欲を見せた。

 実際に棚橋には、多くの因縁が残っている。米AEWとの合同興行で実現するはずだったCMパンクとのドリームマッチは、相手の負傷で流れたまま。また、2人の師匠との関係も急展開を見せている。藤波辰爾とは互いに一騎打ちを熱望しており、来春引退の武藤敬司には引退ロードでの対戦を希望している。

 棚橋は「CMパンクとの試合も諦めてないし、藤波さんとのシングルというのもモチベーションの一つにある。そこに武藤さんのファイナルカウントダウンも入ってきますから。今ね、棚橋の相関図がめちゃくちゃになってます。この振り幅は棚橋以外には出せないなと。そのスケール感にG1優勝も加われば、完全無欠のエースですよ」と目を輝かせた。

 コロナ禍による苦難の時期が続くが、長年団体をけん引するエースには誰よりも強い使命感がある。「ここから実りの秋、豊作の秋になりますよ」。再びプロレス界の主役の座に返り咲く。