ロッテ・佐々木朗希投手(20)が3勝目をマークした24日のオリックス戦(京セラ)で、白井一行球審に詰め寄られた一件が球界内外で波紋を広げている。2試合連続の完全投球で話題沸騰中のニュースターが「恫喝された」格好となったことで一夜明けても収まりそうにない気配だが、この問題をロッテOBで「球界の狂犬」「裏球界のご意見番」こと愛甲猛氏はどう見たのか。直撃した。

 ――佐々木朗と白井球審の問題について、率直な印象を

 愛甲氏 おもしろかったですね。ファンの人たちもあんなシーン見たことないから、余計びっくりしたんじゃないですか。個人的には捕手の松川が白井をとめたところが最高でした。松川はまだ18歳ですよ。あれはたまらなかったね。ただ、真相がどうだったのか、というのはちょっと気になります。

 ――真相といいますと

 愛甲氏 テレビの映像では、佐々木くんが審判に対して何か言っているシーンが映っていませんから。白井があそこまで怒ったのは、何かしらの言葉があったのかもしれないし、何も言っていないのかもしれない。そこは当事者が明かさない限りは分かりません。白井もいろんな意味で名物審判ですからね。とはいえ、白井が不運だったのは、あの(怒った)顔がばっちり映ってしまったこと。あれはまずかった。昔からプロ野球の審判は、テレビに映ることを意識してましたけど、そのあたりは大いに反省すべきだと思います。

 ――テレビ映り? それはどういうことか

 愛甲氏 オレはパ・リーグのロッテからセ・リーグの中日に移籍したんだけど、セの審判はあいさつしても誰も返事をしてくれなかったんですよ。不思議に思ってよくよく聞いたら、セは巨人戦がテレビ中継されるから、審判は選手と談笑しちゃいけないということを厳しく言われていたそうです。まったくテレビ中継されないパの審判は、選手とベラベラしゃべっていたんですけどね。

 ――実際の判定については

 愛甲氏 あれはストライクですよ。元プロ野球選手じゃなくても分かるし、佐々木くんの気持ちも分かります。今回の問題を契機に、日本のプロ野球も新しい試みを導入したらいいんじゃないかなとは思っています。

 ――AI審判の導入ということか

 愛甲氏 そこより前にやることがある。前から疑問に思っていたんですけど、球審は1試合、250~260球のストライクボールの判定をします。その全球について、試合後に確認作業をしているのかという点。まずは技術向上でしょう。その次はメジャーのテレビ中継でもやっているような、ストライクゾーンを画面上に表示し、実際にゾーンを通っているかどうかをスローで検証する。それからストライクボールの判定を、リクエスト対象にすることです。

 ――最後にもし愛甲さんが現役選手で、佐々木朗と対戦するとします。危ないボールがきたらマウンドに向かって行けますか

 愛甲氏 うーん。どうだろう。でも危ないボールが来たら向かっていくと思いますよ。ただ、こんなことがあって向かっていける選手は現役にいないかもしれませんね。

 あいこう・たけし 1962年8月15日生まれ。神奈川県出身。横浜高で80年夏に全国制覇を達成し優勝投手となる。同年秋、ドラフト1位でロッテ入団。3年間の投手生活の後、打者転向。96年に中日移籍、代打の切り札として活躍し、99年の優勝に貢献する。2000年に引退。535試合連続フルイニング出場は当時のパ・リーグ記録。球界の裏側を暴露した著書「球界の野良犬」(宝島社)などで騒然とさせた。現在はタレント、解説者、実業家、ユーチューバーとしてマルチに活躍中。クラブチーム「東京メッツ」でコーチを務める。