【広瀬真徳 球界こぼれ話】新庄剛志監督率いる日本ハムがシーズン開幕直後から苦しい戦いを強いられている。10日現在で14試合を終え、3勝11敗で借金は「8」。勝率2割1分4厘とリーグ最下位に低迷している。
球団は今季を「育成の年」と割り切る。新庄監督も春季キャンプ中から選手の「横一線」を強調。今もその方針を貫きながらシーズンを戦うため、チーム成績の向上には相当な時間を要するだろう。
苦難の道のりを歩む日本ハムだが、明るい話題がないわけではない。若手選手の中には球界を代表する選手に成長する可能性を秘める逸材もいる。その一人が今月10日に23歳になったドラフト8位ルーキー・北山亘基投手だ。
指揮官の抜てきで今季チームの開幕投手を務めたが、個人的には「サプライズ」ではなく当然の起用だったように思える。その理由は一つ。北山は投球技術もさることながら、どんな状況でも動じない冷静沈着な男だからである。
そう感じさせられたのが今年1月上旬の入寮時。当日、新人選手らは一様に緊張感を漂わせていた。だが北山だけは平然とした面持ちで入寮。その後の取材でも終始冷静な口ぶりで報道陣に応対していた姿が今も記憶に残っている。当初は「無口でおとなしい性格か?」とも思ったがそうではない。一度話し始めれば冗舌で、自ら笑いを誘うこともある。だが口ぶりや話し方が常に理路整然。これが大物感を漂わせる。
入寮時に自室に持ち込んだ愛用品「ぶら下がり健康器」に質問が及んだ際も、北山は持参理由を淡々と説明。「姿勢というのは野球のプレー中はもちろん、日常生活の姿勢も大切でトレーニングにも生きてくる。そういったところは大切にしたいと考えています」と真顔でその重要性を説き始めた。
この際には報道陣から「初対面の新人選手がここまで冷静にぶら下がり健康器のことを語るか…」と驚きの声が上がったほど。今思えばこのマイペースで動じない姿勢こそがプロ向きであり、北山の真骨頂。新庄監督もそんな性格を把握していたからこそ、開幕戦という大舞台に送り出せたはず。
6日のロッテ戦では同点の9回に登板。1イニングを抑え、その後チームがサヨナラ勝ちを収めプロ初勝利を飾った。10日の楽天戦でも9回から登板。2イニングを投げ延長戦でのサヨナラ勝ちで、早くも2勝目を挙げた。ここにきて幸運も手繰り寄せ、今後もチームの守護神として試合終盤の厳しい場面を任されるだろうが、活躍次第では新人王を狙えるかもしれない。
読書を愛し「教授」という愛称のもと低迷するチーム内で異彩を放つルーキー右腕。さらなる飛躍を期待しながら注目していきたい。
☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。












