【広瀬真徳  球界こぼれ話】今年も残りわずかとなった。球界の1年を振り返ると、今季も開幕からコロナに振り回された印象が強い。シーズンは日本シリーズまで無事に完結したとはいえ、各球団はコロナの感染防止対策として、年間を通じ観客数の制限を余儀なくされた。多くの球団では客足が思うように伸びず、収益が悪化。その余波でオフの契約更改では、好成績を残しても厳冬更改を強いられた選手が何人かいた。

 その中でも特に成績の割に評価が低かった選手は誰か。お節介を承知で各球団の状況を見てみると、際立ったのがロッテの外野手・荻野貴司(36)である。

 今季プロ12年目だったベテランは、チームの切り込み隊長として開幕からスタメン出場。持ち前のコンパクトな打撃と俊足を武器に、序盤から安打を量産した。リーグ優勝争いを続けた後半戦になっても打棒は衰えず、好調を維持。最終的に安打数を自己最高となる「169」に伸ばしパ・リーグ最多安打のタイトルを獲得した。同時にシーズン24盗塁で同僚の和田や源田(西武)、西川(日本ハム)とともに自身初の盗塁王にも輝いた。打率こそ3割に届かなかったものの(2割9分6厘)1番打者としては文句のつけようがない成績。同じような成績を残した他選手と比較しても今オフは年俸8000万円からの大幅アップが基本線と思われていた。

 だが、今月15日に行われた契約交渉で、球団側が提示した金額は2000万円アップの年俸1億円(推定)にとどまった。昨オフに2年契約を結んだこともあり、年俸が抑えられることは理解できる。それでもシーズン全試合スタメン出場を果たし最多安打、盗塁王に加え守備の名手に贈られるゴールデン・グラブ賞まで受賞しながら〝微増〟では…。他人事ながら「もう少し評価してあげても良かったのでは」と感じてしまった。

 某球団の元査定担当にも聞いてみたが「各チームによって査定法や懐事情が異なるので一概には言えない」としながらも「今季の個人成績とチームへの貢献度を加味すると荻野選手はもう少し(年俸を)もらってもいいはず」とポツリ。続けて「年齢の問題はありますが、他球団だったら今の金額の倍以上もらっても不思議ではない。彼の働きはわれわれから見ても脅威でしたからね」。

 来季年俸はあくまで本人と球団が納得して決めるもの。本人がサインをした以上、周囲がとやかく言う必要はない。チーム愛が強く、球団の金銭事情や仲間への配慮が働いたのかもしれない。それでもやはり気になる荻野の評価。近いうちに本人から〝本音〟を聞いてみたい。


 ☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。