【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】阪神は今季初の5連勝。矢野政権最多を更新する貯金9と快進撃が続く。コロナ禍にあって、猛虎の開幕ロケットスタートは関西に明るい話題を振りまいている。

 4番・大山悠輔内野手(26)が今季初アーチとなる決勝1号2ラン。先発・秋山拓巳投手(29)が7回無失点で2勝目と投打がかみ合った。

 さらには大物ルーキー・佐藤輝が自身初の2試合連発。5号2ランを中堅に放り込み「DAZNバックスクリーンホームラン賞」で賞金100万円をゲットと派手な白星に聖地も沸いた。

 佐藤輝は打球速度173キロの剛弾を放ちながらも「少し詰まりましたが、しっかり振り切ることができたので、入ってくれたと思います」と驚がくのコメント。17試合を消化し13勝4敗の数字を裏付ける勢いを感じさせた。

 この強さは本物だ。そう信じたい。いや、信じている。多くの虎党がそう思っているだろう。だが、好事魔多しというのもプロ野球の世界。決して安心しない虎党は、あのシーズンの苦い記憶を思い出しているはずだ。

 振り返ること13年。岡田阪神5年目の2008年シーズンだった。開幕5連勝を皮切りに快調なスタート。17試合消化時点で14勝3敗の貯金11と、今季よりハイペースで白星を重ねていた。7月9日には中日、巨人に13ゲーム差をつけて首位を独走していた。

 だが、阪神はV逸した。誰もが知る過去だが北京五輪に守護神・藤川球児、正捕手・矢野燿大、4番・新井貴浩を派遣している間に失速。復帰後も新井に腰の骨折が判明し、離脱するなど急降下し巨人に歴史的逆転Vを許した。

 くしくも今季は五輪イヤー。本来は昨年だったはずだが、コロナ禍で延期され奇跡的に今季に開催予定というのも嫌な予感をさせてしまう。未来は読めない。ただ、これだけは言える。08年の阪神には存在し得なかった戦力が、阪神にはある。当時の阪神には詰まってバックスクリーンに本塁打するルーキーはいなかった。

 当時の主力だった矢野監督は佐藤輝について「夢のあるホームランだったね。芯だけでしかホームラン打てないバッターではないんでね」と頼もしげ。佐藤輝は「ホームランはこだわっていきたい。ホームラン打ってチームが勝つのがいい形」と笑顔を見せた。

 半信半疑が確信に変わる秋が来るのだろうか。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。