「野球以外のことに挑戦したい」選手には勉強を勧めています

2020年05月06日 11時00分

【広瀬真徳:球界こぼれ話(特別編)】1月下旬から騒がれ始めたコロナ禍の終息が見えない。プロ野球界もこの影響を受け、5月下旬から予定されていた交流戦の開催を断念。レギュラーシーズンの試合数削減を前提に6月中の開幕を目指している。だが、緊急事態宣言が全国に発令されている現状ではこの見通しすら怪しいため、選手も気持ちが萎え始めている。

 ある中堅野手は先日「開幕日が延期になるたびに気持ちがへこみます」と電話越しに苦しい胸の内を明かしていた。同時に「トレーニングを淡々と続けるだけでは精神的にもたない。何か野球以外のことに挑戦しようと思っています。何かありますかね」と相談された。

 野球選手からこう言われると、お節介を承知で「勉強」を勧めている。もっとも、ただやみくもに何かを学ぶのではない。現役引退後や球界を離れた後に備えるための勉強や国家資格取得の準備である。

 周知のとおり、現役引退後に監督、コーチ、球団職員等で球界に残れる人はほんの一握り。生涯にわたり野球界に携われる人材となると数はさらに絞られる。大半は引退後、一般社会に放り出され、野球とはかけ離れた職業で生計を立てることになる。特に幼少期から野球一筋の選手が一般社会に適応するのは容易ではない。資格や職業経験がないことで劣等感を抱く元選手を実際に何人も見てきた。だからこそ、選手は現役中に少しでも将来に向けた何かを学ぶべきだろう。

 手本にすべき元プロ野球選手はいる。現在、立正大学法学部の准教授として教壇に立つ西谷尚徳さん(元楽天、阪神)はその一人だ。現役時代から練習の合間を縫って教育学を研究。野球選手としての仕事をこなしながら現職の礎を築いた。当時、コーチや同僚から奇異な目で見られたそうだが、本人は以前取材した際、「クビになってから何かを始めるのでは遅い」と選手時代からの勉学や資格取得準備の重要性を説いていた。

 現在、公認会計士として活躍する元阪神の奥村武博さんも同じ。引退後の猛勉強で難関国家資格を取得した彼も「現役時代から将来に向けた準備をすることでセカンドキャリアの幅は広がる」と語っていた。選手たちにとって人ごとの話ではないはずだ。

 今や一般企業でも社会の急変に備え社員の副業や兼業を認める時代である。コロナ禍で開幕を迎えられない選手たちも未曽有の事態を機に持て余す時間の有効活用を考えてもらいたい。

☆ひろせ・まさのり=1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。