「獏(ばく)」といえば、中国の伝説上の動物であり、人間が睡眠中に見る夢を食べて生きると言われている。熊のような体と象のような鼻、サイの目、牛の尾、虎の足、それぞれに似た部位を持つ存在なのだが、このイメージに容姿が似ていることが今現在、バク科の哺乳類が「バク」と言われているゆえんである。

 この空想の動物を基にした実在の動物であるバクに似た未確認生物がいるという、少々ややこしい話があるのだ。

 パプアニューギニアは南太平洋に浮かぶニューギニア島、オーストラリアの北にあるあの大きな島の東側半分を占める国家だ。「最後の楽園」とも言われ、豊かな自然の中には今でも新種の生物が発見される。

「ガゼカ」は現地の言葉で「ブタの悪魔」を意味し、前述のような獏の容姿に似ているうえに、白黒のしま模様と鋭い鉤爪(かぎづめ)を持つと伝わっている。また、クマのように後肢による直立や二足歩行が可能なため、鉤爪を利用した攻撃をすることが推測できる。このために、ガゼカは攻撃的な性格なのではないかとも言われているが、今のところ詳しいことはわかっていない。

 1906年に英国からパプアニューギニアに移住したチャールズ・A・W・モンクトンの目撃情報が残されている。登山中に大きな足跡を発見したので追跡したところ、2メートルを超す恐ろしい獣に遭遇し、鋭い爪で迫ってきたのだという。

 これが西洋において初めてのガゼカ目撃情報となり、その後、米国の新聞で「パプアニューギニアの巨大生物」という記事が紹介されて広まっていったようだ。

 このガゼカの正体だが、ディプロトドンの生き残りではないかともささやかれている。ディプロトドンとはオーストラリアにかつて生息した哺乳類で、コアラやカンガルーと同じくおなかに袋を持つ有袋類である。頭から胴体の長さが3メートルを超える大きさで、「サイ並みに大きくなったウォンバットのようなもの」と、たとえられることが多いようだ。有袋類としては史上最大の生物である。

 クマのような体であるとか、ゾウのような鼻があったのではないかとか、毛づくろいのために爪が特徴的な進化を遂げたのではないかとか、確かに獏やガゼカと共通する部分が多い。

 最後の秘境と言われるだけあって、パプアニューギニアには新種の生物だけでなく、絶滅したとされる生物がいまだに生存している可能性もあるのかもしれない。この地球上にもまだ人類には判明していないことが多いのだ。