第89回都市対抗野球大会の東北地区予選・第1代表決定戦が6日、岩手県営球場で行われ、トヨタ自動車東日本が日本製紙石巻に4―2で勝利、創部7年目で初の都市対抗出場を決めた。トヨタ自動車東日本はエンゼルス・大谷翔平(23)の兄で兼任コーチを務める大谷龍太外野手(30)が「1番・左翼」で先発出場。弟に遅ればせながら初の“全国デビュー”に喜びを語ったが、周囲では大谷家のDNAを引き継ぐ“おいっ子”の存在に早くも注目が集まっている。

「(9回の)2アウトぐらいからウルっときちゃって…。7年やってきて、やっと全国の舞台に立てる。これがスタート。まずは全国で1勝したい」と本戦での意気込みを語った龍太。チーム立ち上げ時の創部メンバーとして、7年前に独立リーグ高知ファイティングドッグスからトヨタ自動車東日本に入社。創部当初は恵まれた環境ではなかったという。

「最初は13人からのスタートで、人数が足りなくてピッチャーが内野に入ったり、夜勤明けに練習をしたりもした。ここまでこれたのは本当に会社の理解があったから」

 今ではチーム最年長、コーチを兼任しながらも精力的にプレーを続ける。この日は4打数無安打だったが、1―1の同点で迎えた3回の第2打席ではチャンスを広げる貴重な犠打。小技の光るプレーで追加点をアシストした。

 海の向こう、同じ赤色のユニホームに身を包み戦う弟・翔平の姿には「活躍してもテレビでしか見れない。彼にはけがなく頑張ってもらえればそれで十分。野球のことは一切聞いてません。あんまりまねしてもしょうがないので」。都市対抗出場の話もしていないといい「今日勝ってからしようかなと。帰ってLINEを見てみます」と話した。

 そんな龍太だが、周囲からは“大谷翔平のおいっ子”にあたる龍太の長男にも注目が集まっている。現在2歳になるという長男だが、スポーツ一家である大谷家の血を引いているだけに、将来野球をやるのかは気になるところ。龍太は「まだ2歳ですし(アスリートとしての片鱗は)そんなにないですよ。特別体が大きいわけでもないですし。野球をやらせる? 僕としては何でもいいんです。(本人に)任せます」と言うが「ただ、おやじはそのつもりなのかも…」とも。

 龍太と翔平の父・徹氏は社会人野球の選手で、この日も龍太の夫人、その長男とともにスタンドから声援を送った。その徹氏は、龍太氏の長男が生まれた一昨年末、長年務めていた会社を退職。現在は龍太の所属するトヨタ自動車東日本のある岩手県金ケ崎町で、地元の中学硬式野球クラブ「金ケ崎リトルシニア」の監督業に専念している。

「お孫さんを指導すると、今から張り切っていますよ。徹さんは龍太くんが子供のころに一緒に野球をしてやれなかったことを後悔していた。ましてや、つきっきりで教えた翔平くんがあれだけ大成したわけだからね」(関係者)。孫を“第2の大谷翔平”に育て上げようと並々ならぬ覚悟だという。

 弟・翔平について「ここまで飛び抜けちゃうと、もはや一ファン。悔しい気持ちもなくなっちゃいましたよ」と話した龍太だが…。大谷家の遺伝子を受け継ぎ、徹氏の指導を受けた“翔平のおいっ子”がどんなアスリートに育つのか、今から楽しみだ。