威信回復なるか。大相撲九州場所初日(8日、福岡国際センター)、横綱豊昇龍(27=立浪)が3場所連続の休場から復帰。新小結美ノ海(33=木瀬)を押し出して白星発進した。横綱昇進後の優勝がなく、右ヒザ手術の影響で秋場所は全休。かつてないほどの逆境に立たされる中、豊昇龍は先輩横綱からの励ましの言葉を胸に背水の土俵に上がっている。

 豊昇龍が休場明けの初日を白星で飾った。美ノ海のノド輪をこらえて反撃に転じると、いなして泳いだ相手を落ち着いて押し出した。取組後の支度部屋では「ちょっとホッとした。先場所は全休したので。いつもより今日は緊張したけど、土俵に上がったら緊張はあまりなかった。いい相撲じゃなかったけど、何より勝って良かった」と息をついた。

 横綱昇進後の優勝がなく、在位10場所で5度休場。7月下旬に右ヒザ手術を受けた影響で、秋場所は初めて全休も経験した。師匠の立浪親方(58=元小結旭豊)によると、担当医師は今場所の復帰に慎重な姿勢を示していたという。同親方は「完璧ではない」としながらも「本人がいけると言うので。(出場の意思を)何回か確認した。(本人に)迷いはない」と強調した。

 大先輩からの〝金言〟にも、背中を押された。今場所前には、横綱経験者の親方と現役横綱が親睦を深める「横綱会」が福岡市内で開かれ、豊昇龍も参加。同席した芝田山親方(64=元横綱大乃国)は、諭すように言葉をかけた。

「(周囲は)みんな〝優勝、優勝〟と言うけれど、そんなことは全く気にする必要はない。横綱だから8番でいいということはないが、とにかく10番を目標に勝てばいいじゃないか。そこからだよ。優勝をするに越したことはないけど、それよりも一つひとつ階段を上っていけばいい」

 横綱の心は、横綱のみぞ知る。豊昇龍が全休した秋場所では、度重なる休場とV逸で逆風が吹き荒れていた。この時にも芝田山親方は「ABEMA」大相撲中継の解説で行き過ぎた批判をいさめ、後輩横綱を激励。横綱会の席で、豊昇龍は「親方の言葉で、気持ちが楽になって救われました」と感謝を伝えたという。

 大事な初日を白星で乗り切った豊昇龍は「久しぶりの場所なので、ファンの皆さんに元気な姿を見せていきたい。一日一番、集中して大事にしていきたい」。優勝への思いを胸の奥に秘めながら、一つずつ白星を積み重ねていく構えだ。