空前のオカルトブームの中、ひときわ脚光を浴びている“怪談かいわい”。そこで活動する怪談師、怪談作家たちの知られざる世界を紹介する。今回は「怪談師」というなりわいについてお届けしよう。怪談界屈指の人気作家で怪談師でもある川奈まり子氏は「元セクシー女優」という経歴を持つ。なぜ、そしてどういう経緯で怪談の世界に足を踏み入れたのだろうか。
怪談界には大きく分けて「怪談作家」と「怪談師」がいる。
怪談作家は文筆業が主だ。プロ作家志望から怪談ジャンルへと傾倒していく流れだが、もともと怪談に何らかの興味関心があるケースが多い。
史実や取材に基づいた話もあれば、完全な創作による作品もあるが「作家」と名乗るには、やはり著作が刊行されていることが、ある種の“条件”となる。
一方の怪談師。こちらには条件も資格もない。怪談さえ話すことができれば「怪談師」である。怪談作家が怪談師を兼ねるケースも少なくないが、実に様々な経歴から怪談師となっているのは興味深い。
その最たる人物が川奈まり子氏と言っても過言ではない。2014年に怪談ジャンルで初の単著「赤い地獄」(廣済堂)を刊行以降、毎年多くの作品を執筆する怪談作家だ。また話術にもたけ、今や怪談イベントには欠かせない怪談師でもある。
その川奈氏が、人気セクシー女優だったのは言わずと知れた話だが、なぜ怪談の道へと入っていったのか――。
キッカケとなったのはセクシー女優を引退して数年がたった頃に入った「小説教室」だったという。
川奈 そこは森村誠一先生(注1)をはじめ、先生の元担当編集者さんとかが出入りしているところで。100人くらい生徒がいたんですが、その中で評価された5人くらいが、森村先生や上田秀人先生(注2)から直々の添削指導を受けられたのです。私も結構選んでもらっていたのですが、そこで書いていた短編がホラーテイストばかりで…。
ミステリー、サスペンス、ハードボイルドと、様々なジャンルを書いたそうだが、すべてホラー要素の入った“怖い系”だったという。
川奈 その中でも、森村先生や上田先生が「これはすぐに商品になる」というのが5本くらいあって、本にまとめようという話になったのですが、一冊にするにはページ数が足りないと。早速1本書き下ろしたのですが、まだ30ページほど足りない。すると「自己紹介も兼ねて、自身の体験談を元にした怖い話って書けませんかね?」と言われたわけです。
読者の方はお気づきかと思うが、川奈氏にはもともと物書きの才があり、セクシー女優になる前から、プロの作家を目指しながらフリーライターをしていた過去があった。そして、急きょ依頼され書いたのが「八王子」。自身の出身地をタイトルにした連作短編だった。
注1=江戸川乱歩賞や日本ミステリー文学大賞など数々の賞を受賞した作家。「人間の証明」「野性の証明」はベストセラーとなり映画化もされた。2023年没。
注2=時代小説、歴史小説を中心に多くのシリーズものを執筆。「百万石の留守居役」シリーズでは吉川英治文庫賞を受賞した。2025年没。
☆かわな・まりこ 東京都八王子市出身。フリーライターからセクシー女優を経て、現在は怪談作家・怪談師という異色の経歴を持つ。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。近著に「怨みの冥闇 現代奇譚集」(竹書房)、「昭和懐古奇譚集 なつかしい日本のこわい話」(笠間書院)ほか多数。「X」は【@MarikoKawana】。













