【あなたの知らない怪談世界】空前のオカルトブームの中、ひときわ脚光を浴びている“怪談かいわい”。そこで活動する怪談師、怪談作家たちの知られざる世界を紹介する。第1回は、元セクシー女優という異色の経歴を持ち、現在は怪談界屈指の人気作家、語り部となった川奈まり子氏が登場。まずは近年の怪談ブームについて聞いてみた――。
怪談ブームで象徴的なのが、今や日本全国、どこかしらで毎週のように行われている「怪談イベント」だ。
小劇場や公民館、コンサートホールクラスまで大小さまざま。“怪談師と行く”と題して、ゆかりのスポットを回りながら、食事や移動中に怪談を聞く旅行ツアーもある。「夏の風物詩」は昔の話。四季を問わずに楽しむ“エンタメ”と化している。
一体、このブームはいつから始まったのか。川奈氏に聞くと「コロナ禍ですね」という。
川奈 ライブハウスや寄席、小劇場など、集客してのイベントが中止になり、怪談師だけでなく場所を貸す側も困ってしまった。そこで盛んに行われたのが「ライブ配信による課金」です。
配信自体は以前からあったそうだが、課金というところまで至っていなかったという。
川奈 配信した上にアーカイブも売れる。それなりに稼げるということで一気に広まったわけです。怪談は話す人さえいればいい。人から聞いた話でも創作でもいい。それをしっかり覚えられさえすれば配信番組は成立しますから。
怪談のウケが良くなれば「話者」も増える。芸人やユーチューバーなどもそのトレンドに乗り“怪談かいわい”へと移ったことで裾野はさらに広がった。
しかし、川奈氏によると、このブームをつくった“そもそものキッカケ”があるのだという。
川奈 いくつかあるのですが、近いもので言えば2018年に出た、松原タニシさん(注1)の本「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房)でしょうか。事故物件については、そのずっと前から大島てるさんが「大島てる物件公示サイト」(注2)を開設していて、はやってはいましたが“知る人ぞ知る”感じだった。それがタニシさんの登場で「事故物件」という言葉が一般にも広がり、ご自身もすごい売れっ子になっていったんです。
この本のヒットで「事件や事故で家賃が下がった物件」という認識でしかなかった事故物件と、オカルト(怪談)が結びつくことになり、後の怪談ブームへとつながっていく。まさに「下地」となっていたのだ。
川奈 タニシさん、てるさんがユーチューブを始め、さらに食えなくなった、私のような怪談屋も始めたことで、外出自粛していた方々が片っ端からチャンネル登録して、怪談番組をハシゴするというファン層ができていった感じですよね。
芸人やユーチューバーからの転身組をキッカケに怪談に興味を持った層が、検索を進めるうちに、川奈氏のような“プロパー怪談師”を知り、さらにハマっていくという現象も起き、そのブームは多岐に及ぶこととなった。
注1=芸人。テレビ番組をきっかけに、事故物件に次々住むように。本はヒットし、後に映画化もされた。
注2=事故物件の情報ウェブサイト。無料で閲覧できる。
☆かわな・まりこ 東京都八王子市出身。フリーライターからセクシー女優を経て、現在は怪談作家・怪談師という異色の経歴を持つ。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。近著に「怨みの冥闇 現代奇譚集」(竹書房)、「昭和懐古奇譚集 なつかしい日本のこわい話」(笠間書院)ほか多数。「X」は【@MarikoKawana】。













