【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#635】南極のUMAとしては、巨大な人間に似た「ニンゲン」や、ロシアが南極の地下湖で発見した擬態タコである「46―B」などの名前が挙がる。

 中でも、最も有名なのは、1958年(昭和33年)2月13日に、リュツォ・ホルム湾で南極観測船「宗谷」乗組員によって目撃された「南極ゴジラ」だろう。

 宗谷の前方300メートルくらいに、かなり大きな黒い物体が見えた。目やとがった耳、背中にのこぎりのようなヒレ、全体を覆うこげ茶色の毛が判別できたという。クジラやアザラシとは全く異なる生き物だったが、30秒ほどで氷海に潜ってしまい、撮影することはできなかったそうだ。

 その時の南極ゴジラは、海で泳ぐ様子の目撃談だったが、実は前年(1957年2月)に第1次南極越冬隊によって目撃された怪物は、陸上をのし歩き昭和基地に迫ったというのだ。それでは目撃談を見てみてよう。

 第1次越冬隊員による貴重な証言が残されている。「アサヒグラフ」(1958年4月25日、朝日新聞社)に掲載された「一年間の南極ぐらし・越冬隊員の座談会」に詳細が述べられている。

「怪獣あらわるというのがありましたネ。前世紀の、ゴジラみたいなでかいのが、のこのこ基地の方へ歩いてくる。みんなで大騒ぎしたんですが、いくらたっても 近寄ってこない。動く動くというから、測ったら動いていないというし……とどのつまりは、大陸にでている露岩が、シンキロウで動くように見えたという結論になりました」

 結局、露岩を蜃気楼を見誤ったのが真相なのかもしれない。しかし、南極基地に〝巨大怪獣〟が迫る中、真相が判明するまではさぞや、肝を冷やしたことであろう。

 あの有名な南極ゴジラの1年前に、このような事件があったのである。南極ゴジラと区別して、この事件を「南極ゴジラ0号事件」とネーミングしておこう。ちなみに、このネーミングは、徳島県の郷土史家である多喜田昌裕氏によるものである。