こんなコントがあります。

 喫茶店でコーヒーを飲んだ客が、会計のときに一万円札を出して、「釣りはとっておいて」と店を出ていきます。それを見ていた間抜けな客が、ランチを食べ終わって千円札を出し、「釣りはとっておいて」と言うと、店員から「すみません、お客さん。お代が足りません」と…。

 なんとも笑い話ですが、「お釣りはいらないよ」と言って、お金を生かせるケースがあります。

 食品会社を営むある社長は、自宅の駅近くの寿司屋に、月に何度か訪れます。少し飲んで寿司をつまんだ後でお会計となりますが、社長はだいたいの金額が分かるので、毎回、一万円札を出して「お釣りはいらないよ」と引き揚げるそうです。実際の料金は8000円ほどですから、2000円前後をチップとしてくれるわけです。なんともスマートなやり方ですね。

 あるとき、寿司屋のおやじさんが相談をもちかけました。

「知り合いがアパートを探しているんですよ。なんとか力になってもらえませんか」

 社長が自分の名刺を渡し、「では、ここに連絡してください」と伝えると、数日後、その人から電話があり、格安物件を紹介したところ、大いに喜ばれたそうです。その話は当然、寿司屋の店主に伝わり、店に来るお客さんに「あの社長さんがね…」と事の次第を話します。

 おかげで、その店では社長の評判は高まり、商売はますます繁盛したそうです。

「お釣りはいいよ」のやり方も、人の紹介の仕方にも、社長の人柄とスマートさが感じられます。お金と気持ちの上手な使い方によって、評判をグンと上げた例といえるでしょう。