高市早苗首相が熊本地震の被災地を訪問したことを伝える動画が物議を醸している。

 首相官邸の公式X(旧ツイッター)は3日夜、「高市総理による、令和8年熊本地震による被災状況視察のための熊本県訪問の様子です」との文言とともに2分弱の動画をアップした。

 当該動画は高市首相が陸上自衛隊ヘリコプターに乗り込むシーンで始まると、すぐさまメロウなピアノのBGMが流れ出し、被災者から話を聞く高市首相の姿が映し出された。その後、ヘリから被災地の状況を確認するシーンとなり、犠牲者が多数出たイオンモール熊本や日本製紙八代工場の上空では高市首相は何度も手を合わせた。

 映像にはBGMに合わせて、高市首相の会見音声も加えられており、「明日(4日)、200億円を超える規模の予備費の使用を閣議決定し、必要な予算を確保してまいります。あわせて激甚災害の指定につきましても、現時点で公共土木施設や農地などの災害復旧事業について本激として指定する見込みでございます」と取り組みをアピール。

 動画の最後は被災者の背中越しに高市首相の顔が映し出され、「全部が全部ありがったかったです」という被災者の言葉をうなずきながら聞くシーンで、全体としてプロモーション動画のような感じであったことは否めない。

 芥川賞作家の平野啓一郎氏は「いくら政府広報とは言え、何でもかんでも首相のプロモーションビデオの素材にしていい訳ないだろう。アホか」と一蹴。

 東京大学名誉教授の石田英敬氏も「これはひどい。災害視察を『プロモーションビデオ』化している。現実のノイズや音声をオフにしてBGMまでつけている。ドキュメンタリーでは決してやってはいけないこと。広告代理店的なイメージづくりだ。映像の倫理に悖る。自分たちの『イメージ』づくりのために人々の『現実』を消している。そんなこと構ったことではない、という価値観の連中のやることだろうが」と苦言をていした。

 立憲民主党の田島麻衣子参院議員は「被災者との感動的な握手シーンの後ろでは、無表情でスマホをいじるスーツ姿の男性、カメラを構え続ける男性、不安そうに総理を見上げる男性。人工的に作られた絵である事が分かる。こんな事をするならば、汗だくでお風呂やクーラーや簡易ベッドを待つ被災者の生の声を、膝をついて直接、聞いて頂きたかった」とXにつづった。

 物議を醸した首相官邸の投稿は4日夕現在で、5800リポスト、約400万インプレッションと大拡散。「やってる感満載のプロパガンダ」「震災をキレイな動画にするって正気か」など批判的なコメントが多く寄せられている。