覇権交代か。大相撲名古屋場所千秋楽(26日、愛知・IGアリーナ)、関脇安青錦(22=安治川)が大関霧島(音羽山)、関脇熱海富士(伊勢ヶ浜)との優勝決定ともえ戦を制し、12勝3敗で3場所ぶり3度目の優勝を果たした。今場所は左足にケガを抱えながらも、1場所での大関復帰と優勝を初めて同時に達成。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(42=本紙評論家)は安青錦の今後の活躍に太鼓判を押す一方で、ふがいない結果に終わった両横綱には苦言を呈した。

 安青錦が激闘を制して賜杯をたぐり寄せた。単独首位で臨んだ本割は、1差で追う熱海富士に完敗を喫して決定戦に持ち込まれた。それでも、最後まで心は折れない。ともえ戦の初戦は熱海富士を寄り切ってリベンジに成功。続く霧島戦では、低く当たって頭をつけながら左下手を引くと、外掛けで崩しながら執念で寄り切った。

 満身創痍だった。大関カド番だった夏場所は左足首の故障で全休し、関脇に転落。今場所中盤には新たに左足親指を負傷した。その中で10勝を挙げて1場所での大関復帰を決めると、最後は1日3番の消耗戦を驚異的な底力で制覇。表彰式の優勝力士インタビューでは「すごくうれしい。我慢強く自分らしい相撲を取れた。(今後は)一番上の番付を目指していきます」と力強く語った。

 秀ノ山親方は「今場所の安青錦はケガをした後も顔色一つ変えず、淡々と自分の相撲を取り切る姿が印象的だった。千秋楽の本割で負けても動揺せず、決定戦に向けて静かに心を整えていた。1年前の名古屋場所は優勝争いの中で勝ち急ぐ焦りが表情に出ていたけど、今は何があっても微動だにしない。この1年でいろんな経験をして大きく成長した」と改めて精神力の強さを絶賛する。

 相撲内容については「以前は相手の馬力で前傾姿勢を崩されて負ける相撲も多かった。今場所は相手の圧力を横からいなしたり、絞りながら下から起こしたり。対応力が光っていた」と分析。今後に向けて「やはり、自分の『形』を持っている力士は強いと感じた。再び横綱を目指していく挑戦にも期待が持てる」と太鼓判を押した。

 一方で、今場所は両横綱のふがいなさが目立った。豊昇龍(立浪)と大の里(二所ノ関)は中盤10日目までに4敗し、優勝争いから早々と脱落。その後も黒星を重ね、ともに負け越しの危機に直面した。豊昇龍は14日目に休場して戦線離脱。大の里は3場所ぶりに皆勤したものの、9勝6敗と2桁を割り込んだ。

 秀ノ山親方は「序盤から格下に取りこぼしがあった。負けるにしても相撲内容が悪すぎるし、どこか自信なさげに相撲を取っている印象。横綱の威厳が薄くなっていると感じる」と苦言。「今は横綱とそれ以下の力士の力が拮抗してきている。もっとやらなきゃいけないんだという使命感を感じながらやってもらいたい。力の差がないという現実に、しっかりと向き合って取り組んでほしい」と奮起を促した。

 安青錦が再び横綱候補に名乗りを上げた中、両横綱は権威を取り戻すことができるのか。今後の覇権争いに注目だ。