テレビよ、お前もか…。NHK放送文化研究所が16日に発表した国民生活時間調査によると、20代の7割、30代の6割がテレビをほぼ見ない実態が浮かび上がった。もちろん先に始まっていた“新聞離れ”も深刻で、オールドメディアはこぞって危機的な状況。そこで今回は、流通ウォッチャーの渡辺広明氏と早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授を招聘し、メディア復活のヒントを聞いた。

 ――ご多忙の中、弊社にご足労いただきありがとうございます。メディア業界への逆風はますます厳しくなって、もはや突風で立っていられません

 渡辺広明(以下渡辺氏)まず、みんなユーチューブを見ているのは明らかだよね。X(旧ツイッター)やインスタグラムといったSNSの影響もあるけど、要するにオールドメディアは可処分時間を奪うだけの魅力が足りていないということでしょう。

 長内厚教授(以下長内教授)う~ん、それは正論が強過ぎるかもしれません(苦笑)。東スポは最近、UMA(未確認生物)を1面でやったりしていますか?

 ――1面はしばらくないですね。今だと北中米W杯が盛り上がっているので、まずはそちらが中心。UMAを1面にしても売り上げ増にはつながらないといったデータがあるようで…

 長内教授 まず、そこに落とし穴があるかもしれませんね。業務効率化、つまり既存のプロセスから無駄を省き、同じ成果をより少ないリソースで達成しようとすると、イノベーションが起きなくなるという学説があるんです。

 渡辺氏 分かる。ワクワクしなくなりますよね。W杯を1面にするにしても、やっぱり同質化せず飛び抜けた記事を出してほしい。こういうと「記者が減って大変、取材費の削減が…」って君は毎回言い訳が多過ぎるんだ(笑い)。

 ――いやいや、“兵隊”が減っているのに無駄な戦はできないでしょう

 長内教授 優良企業など恵まれた環境だと非連続なイノベーションが起きづらいという指摘もありますね。私はマスメディアの皆さんの心のどこかに「自分たちは保護されなきゃいけない存在だ」というような感覚があるのではないかと思ったことがあります。

 渡辺氏 確かに、いわゆる特権意識を持った“上から目線”が気になる報道はありますよね。

 ――……ゼロだとは思いませんが、そんなには。東スポはコンビニで買ってくれるお客さまが多いので軽減税率の恩恵もほぼ受けていません。ところでメディアがイノベーションを起こすにはどうしたら?

 長内教授 既存組織の影響を排除して社長直轄の別働隊をつくるのが一番だと思います。それも組織の中で評価が低い人が案外適任です。

 渡辺氏 それはなぜですか?

 長内教授 既存の評価軸で低くても別の評価軸で光る可能性があるからです。ソニーが1980年代後半に発売したNEWS(ニューズ)というワークステーションは社内のダメな人たちが集まって生み出したヒット商品。こういうケースは意外と多いんですよ。

 渡辺氏 僕が思うのはもっと各メディアが差別化すべきだということ。中でも東スポは特オチ(=大きなニュースを報じ損ねること)を過度に恐れなくていいんだから、常に差別化を念頭に置かないと。偉そうに聞こえるかもしれないけど、僕の場合、東スポの連載があったから今のテレビやラジオの仕事につながったし、感謝しているからこそ東スポが続いてほしい。

 長内教授 差別化は戦略の基本です。ところで東スポ餃子はどうなんですか? 何でもやるという意味ではすごくいいと思いますが、餃子の購買層と読者層をどう重ねていくのか…。

 ――昨年9月に中山競馬場に東スポ食堂が誕生してリアルな接点が生まれました

中山競馬場で長蛇の列を作っている東スポ食堂
中山競馬場で長蛇の列を作っている東スポ食堂

 渡辺氏 いいじゃん。どんどん打って出るべき。変わらなければ取り残される。これはコンビニ業界をずっと見てきた僕がたどり着いた結論です。

 長内教授 それから大切なのは“遊び”ですね。「どうすればイノベーションが起きますか?」と経営者からよく質問されますが、うまくいっていない時の選択と集中が一番ダメなんです。

 ――その時、経営者の皆さんはどんな反応を?

 長内教授 総論賛成だけど各論難しい(苦笑)。

 渡辺氏 その受け止めだと結局やらないんですね(笑い)。

 長内教授 その通りです。人・物・金をどう入れて実行するかが経営者の仕事なんですけど、実行は思った以上に難しいようで…。

 渡辺氏 今こそ猪木が言った「(試合に)出る前に負けること考えるバカいるかよ!」を思い出してほしいですね。

 ――渡辺さんにそこまで言われなくても「やってやるって!!」(一同爆笑)

越中詩郎(左)に弓矢固めを決めるアントニオ猪木(1988年10月)
越中詩郎(左)に弓矢固めを決めるアントニオ猪木(1988年10月)

☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとして様々な商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。

☆ おさない・あつし 1972年生まれ。早稲田大学ビジネススクール教授。京都大学経済学部卒業後、97年ソニー株式会社入社。主な研究領域は技術経営、経営戦略論。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。UMAがお好き。

対談後に平鍋幸治東京スポーツ新聞社社長(中央)とグータッチする長内教授(左)と渡辺氏.
対談後に平鍋幸治東京スポーツ新聞社社長(中央)とグータッチする長内教授(左)と渡辺氏.