元自民党総務会長の笹川堯氏(90)が、「昭和・平成 怪物秘録 最後のドン 独占インタビュー」(青志社)を上梓した。政局や政策のキーマンで、生き字引ともいえる笹川氏が高市政権の展望や混迷を極める世界情勢の中で、日本が取るべき姿勢を示した。
笹川氏は1986年から衆院議員を7期務め、科学技術政策担当相、衆院予算委員長、衆院議院運営委員長、総務会長などの要職を歴任した。2009年にバッジを外した後も政界とのつながりは深く、同著では田中角栄、中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三の歴代首相や各界の大物との秘話などを包み隠さずに明かしている。
「本を書くって大変だよ。間違うと国会じゃないけど、『ここ間違ってるぞ』とやられる。だから現職中はなるべく書かない方がいい。ぜひ多くの皆さんに読んでもらいたい」といたずらっぽく笑った。
高市早苗首相は新進党時代からの後輩に当たる。憲政史上初の女性宰相の手腕をどう見ているのか。
「衆院選であんなに勝つとは思わなかったね。公明党が離れたとはいえ、引き算や足し算が掛け算になっちゃった。ただ、これがずっと続くということではない。国会は民主主義で最後は数が多い方が勝つが、野党が寝転がるとものすごく時間を食う。おごらずに丁寧にやることが大事です。私は衆院議運委員長だった時は毎日、参院に行って野党に『よろしくお願いします』とあいさつしていた。上席だからこそ、頭を下げるべきで、高市政権で交渉できる人がいるのかな。これができれば、僕はけっこう持つと思う」
16年に自民党東京都連にケンカを売る形で都知事選に挑戦した小池百合子氏を笹川氏は支援し、女性初の都知事を誕生させた立役者でもある。
「腰を痛めて、前日にスイスから車イスで帰ってきたら、小池さんから電話があって、『助けてください』って。あれ、『助けて』と言われなかったら応援に行っていなかったよ(笑い)。そこからみんな小池さんを応援するとなって、最後の池袋での街宣は、あんなに多くの人を見たことはこれまでなかったね。みんなで『緑』だと言って、大根やキュウリを持って、野菜市場のようだった。小池さんは能力があったから、都知事で良かった」
政界における「ガラスの天井」を破る先鞭をつけたともいえる笹川氏だが、「能力的にいったら森山(真弓)さんも可能性はありましたが、官房長官でそれ以上はいかなかった。だけどね、男性だから女性だからと考えているうちはまだダメ。数のうえではもう当たり前なんだから」と淡々と語った。
目下の懸念は米とイスラエルによるイラン攻撃で、ホルムズ海峡が事実上閉鎖され、ロシアのウクライナ侵攻も含めて、世界情勢は深刻な状況に陥っていることだ。
「中東戦争で一番被害を受けるのは日本なんです。爆弾は落ちてこないが、経済的な損失はすごい。ガソリンの暫定税率が下がって、みんな喜んだと思ったら、もっと上がりますよ。備蓄がありますとノンキなことを言っているけど、3か月なんかで戦争は終了しない。国会運営がうまくいってもアメリカが疲弊してくると、トランプさんはその金を他から取ろうとする。戦争が起きて自国で賄えるのはアメリカだけ。中国とも緊張状態で、台湾海峡封鎖となったら船は台湾の向こう側を回らなければならないから大変ですよ。日本の経済の元は原油。金価格がいくら上がっても持っている人は少ないから痛くもかゆくもないが、原油が上がれば全部上がる」
米からの防衛費増額の圧力はさらに高まる懸念がある中で、威勢が良いだけの右傾化には危惧する。
「軍備はあくまで火災保険みたいなもので、家を造った人はみんな入るよね。たくさんの金額を入れると払いにくいから安めの保険に入る。軍備もそう。持たなければ独立国家でない。ただどんどん新しい軍備をこしらえるとあれ買え、これ買えになるから軍備疲れする。日本は原発がある限り、攻撃には弱く、防御もできない。だから絶対戦争の道を選んではダメだ。降伏せずに、どうするかはもう対等に付き合うしかない。台湾のことにもあまり口出ししないほうがいい」と力説した。
☆ささがわ・たかし 1935年東京都生まれ。86年の衆院選で自民党公認で初当選し、新進党を経て、自民党に復党。森内閣で科学技術政策担当相を務め、衆院予算委員長、衆院議院運営委員長、総務会長を歴任。衆院7期。公益財団法人全日本空手道連盟名誉会長。父親は日本船舶振興会(現・公益財団法人日本財団)初代会長の笹川良一氏。三男の笹川博義氏は自民党衆院議員。「昭和・平成 怪物秘録 最後のドン 独占インタビュー」(青志社)を今月出版。













