阪神・藤川球児監督(45)が6日、今年初の甲子園で行われたソフトバンクとのオープン戦に5―0で勝利。その一方で敵将・小久保裕紀監督の言葉に感銘を受けた。

 勝敗や駆け引きを超えた、野球人同士の深い敬意。試合後、虎将が明かしたのは、メンバー交換の際に交わした何気ないやり取りだった。

 昨季、日本シリーズで対戦した指揮官同士のあいさつ程度の交流、ではなかったことに意味がある。侍ジャパン監督も務めた経験を持つ小久保監督は、代表活動の重みも、その過程で選手が背負う責任も、誰よりよく知る立場にある。

 だからこそ左アキレス腱断裂により代表を辞退した阪神・石井大智投手(28)を気づかう言葉を藤川監督に投げかけたという。藤川監督は単なる社交辞令として受け流さなかった。「代表監督もされてますから。全体像も見えてる監督さん」と繰り返したワードに小久保監督の視野の広さへの感銘が表れていた。

 互いにリーグを代表する強豪チームを率いる立場にあることは共通点。そうでありながら、球界全体、NPB全体の流れの中で物事を見ている部分は、藤川監督にとって新鮮だった。自軍だけの勝利を追う監督ではなく、日本球界を背負ってきた人物だからこそ出る言葉。日本代表という重責を背負いながら、故障で全うできなかった選手に対しても「チームの損失」で終わらせず、一人のアスリートとして案じる。

 その姿勢から、藤川監督も「石井もアスリートとして救われる部分がある」と感謝を示した。現役時代、日本代表の重圧も日の丸の誇りも知る藤川監督。だからこそ小久保監督のひと言の価値が理解できた。甲子園で交わされた短い会話の中にあったのは、重い立場で野球界を生きてきた者にしか分からない思いやりだった。

 試合は開幕投手に決まっている村上が3回無失点。育成の嶋村捕手がスタメンで9イニング、マスクをかぶって3安打、完封勝利と指揮官が語る要素は多かったのだが。試合後の藤川監督がより熱く語ったのは、代表監督経験者ならではの温度だった。