米軍とイスラエル国防軍の連携により、イランの最高指導者ハメネイ師が2月28日、死亡した。その後、イランが湾岸諸国を攻撃し、ヒズボラなどの代理勢力を巻き込み戦火が拡大する中、イランの宗教指導者である大アーヤトッラー(最高位の宗教法学者)が世界中のイスラム教徒に、米国とイスラエルへの復讐を呼び掛けるファトワー(宗教令)を発令していたことが分かった。世界各地でテロが激化することが懸念されている。
イスラエル紙エルサレム・ポストは先日、ハメネイ師の〝殉教〟を受けて、大アーヤトッラーのホセイン・ヌーリ・ハメダニ師(100)とナセル・マカレム・シラジ師(99)が、イスラム教徒に復讐を呼びかけるファトワーを発したと報じた。
ハメダニ師は「革命の殉教指導者の血を復讐することは、すべてのイスラム教徒の義務である」として、「疑いなく、犯罪国家の米国と血に飢えたシオニストは行き詰まりに達しており、今回は強力な武装部隊が決定的で忘れられない反撃を行うだろう」と述べた。
一方、シラジ師はファトワーの中で、イスラエルと米国を「人類の最も邪悪な敵」「この犯罪の主たる実行者」と断定。そして「イラン国民とイスラム世界は、革命の殉教指導者の血の復讐者である。復讐を求めることは、世界中のすべてのイスラム教徒の宗教的義務である。それによってこれら犯罪者の悪を世界から取り除くことができる」とファトワーを出した。
ファトワーとは、宗教当局やイスラム法学者が出す宗教判断であり、信者は宗教的義務として従うとされる。宗教界で最高位に位置する大アーヤトッラーが発令しただけに影響は大きい。
軍事事情通は「欧米の専門家の間では、このファトワーにより、世界各地でイランのスリーパーセル(潜伏工作員)やローンウルフ(単独犯)によるテロ攻撃が、米国やイスラエルの大使館、企業、レストランなどに対して起きる可能性が高まったという分析が出ています。ファトワーに従う法的義務はありませんが、大アーヤトッラーのファトワーだけに命令と受け止める人が出るかもしれません。工作員だけでなく、個人の信奉者が独自に動く可能性もあります」と指摘する。
ファトワーによって実際に暴力が引き起こされた例がある。英国の作家サルマン・ラシュディ氏は1989年に小説「悪魔の詩」を出版し、その中に神への冒とくと思われる内容があった。当時のイランの最高指導者ホメイニ師がラシュディ氏と発行にかかわった関係者に死刑を宣告するファトワーを発令。その結果、日本人の翻訳者や出版関係者などが世界各地で襲撃され、数十年にわたり負傷者や死者が出た。ラシュディ氏も2022年に米国のイベントで複数回刺されたが、かろうじて一命をとりとめた。
今回ファトワーが発令されたことで、世界はますます混沌とした状況になりそうだ。












