【イタリア・ミラノ19日(日本時間20日)発】21年の軌跡が詰まった4分間だった。ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート女子フリー(ミラノ・アイススケートアリーナ)が行われ、ショートプログラム(SP)2位の坂本花織(25=シスメックス)が147・67点、224・90点で銀メダルを獲得した。憧れのスケーターと公言する五輪2大会連続出場の鈴木明子さんが現役最終年に演じた「愛の讃歌」を披露。その鈴木さんが取材に応じ、思い出の曲に込められたエピソードを明かした。
今季限りで引退を表明している坂本にとって、今大会が最後の五輪。演技後半の3回転フリップが単発となったものの、すぐさま3連続ジャンプで立て直した。エースの意地で渾身の愛の讃歌を演じ切ったが、涙は止まらなかった。「完璧に決めたかった。できなかった分で優勝を逃した。苦しくて涙が出たけど、奇跡のような(北京五輪の)銅メダルから銀メダルで悔しいと思えるぐらい成長した。4年間頑張ってきてよかった」と目を潤ませた。
坂本は2014年ソチ五輪のSPで鈴木さんが演じた愛の讃歌に心を動かされた一人だ。「最後にこれを持ってくるのは、本当に素敵だなと感じて自分もやりたいなと思った」。今季のフリーは愛の讃歌を中心とした3曲のメドレーをセレクト。五輪前の1月上旬には、テレビ局の対談で鈴木さんと語り合う機会があった。
ともにラストイヤーにその曲を選択したスケーター同士、ブラッシュアップをできると感じた点は一致した。鈴木さんがアドバイスを送ったのは、メドレーが愛の讃歌に変わるタイミングでの動きだった。「もう少しタメをつくることができたら、ステップがより引き立つんじゃない?」。そう伝えると、坂本は「そうなんですよ。自分もそう思っていました」と深くうなずいた。
わずか0・数秒の世界。貪欲に己を磨き続けるエースは呼吸への意識を高めた。鈴木さんは「演技に命があるという言い方を個人的にはしているけど、さらっと演じるのではなくて、息が止まるような瞬間やハッとする部分があったりすると、もっと演技が生きているものになるではと思った」。表現力に長けた新旧のスケーターが共闘し、唯一無二の愛の讃歌をつくり上げた。
高難度ジャンプに何度もチャレンジしてきた。それでも坂本は安定感と表現力を磨く道を選択。自らの意思を貫き、世界への扉を開いた。鈴木さんは「若い頃は今のような表現は出せなかったと思う。愛の讃歌を滑ったことがあるからこそ、坂本選手の完成度の高さを実感しているし、これまでの経験をすべて演技に落とし込める領域に入った。坂本選手の愛の讃歌が、次の世代にも受け継がれていったらうれしい」と感極まっていた。
同種目で初となる2大会連続メダルは、紛れもない勲章だ。坂本は「今まで決めてきた分なんで、ここで出せなかったのかな。だいぶ悔しい」と声を詰まらせながらも「やり切れなかった悔しさはあるけど、ここまで来れたのは明子さんが、会った時にすごく前向きな言葉をかけてくださるから。本当に感謝しています」。喜びと悲しみが凝縮された演技は、永遠に語り継がれる。












