新アプローチで生まれ変わった。2026年ミラノ・コルティナ五輪最終選考会を兼ねたフィギュアスケートの全日本選手権最終日(21日、東京・国立代々木競技場)、女子フリーが行われ、坂本花織(25=シスメックス)が154・93点、合計234・36点で5連覇に輝いた。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、今季世界最高得点をマーク。同競技で日本女子初となる3大会連続の五輪切符を手にしたエースは、現役ラストイヤーを迎えるにあたり、栄養面で大改革に取り組んでいた。

 あふれる涙は、重圧を乗り越えた証しだった。7本のジャンプをすべて降り、演技を終えると会場中から拍手が沸き起こった。現役最後の日本一決定戦で大歓声をかみしめた絶対女王は「最後まで自分らしい滑りができた。何をするにも三日坊主だったけど、スケートだけはこんなにも長く続けられた。なんか『人生、虹色だな』って感じがした」と声を弾ませた。

 日本フィギュア界初の「五輪金、銀、銅メダル」コンプリートへ弾みをつけたが、昨季まではコンディション調整に悩まされていた。競技の特性上、一定の体重管理が必要。しかし、過度に体重を気にするあまり、少ない日は摂取量が1000キロカロリーを下回る日もあった。食事で栄養を補給できなければ、体にとっては大きなマイナス。年間40日ほど体調不良などで練習を積めなかった。

 そこで味の素社は「失っていた40日を伸びしろに変えよう」というテーマを掲げ、7月から坂本の栄養面をサポート。担当の高柴瑠衣さんは「『よくこれで動けているな』というのが最初の印象だった。ダイエットをしている女子高生かと思うくらい食べていなかったけど、管理してきた結果だと思うので、努力の矛先を変えたら絶対に良いものになると思った」と当時を振り返る。

日本代表のアイスショーに登場した6月は、まだ食事改善の前だった
日本代表のアイスショーに登場した6月は、まだ食事改善の前だった

 高柴さんによると、昨季までの坂本は「エネルギー摂取が足りず体が飢餓状態と判断して、省エネモードの体になった結果、免疫や集中力が低下している」ような状態だった。長年の競技人生で身についた食生活を改善する上で、体調不良が生じる経緯を資料などを用いて詳細に伝えた。

 現在は朝昼晩の3食に加え、補食も取り入れたことで平均2300キロカロリーを摂取。「本当はもっと食べてもいいような消費カロリー数ではあるけど、今の彼女にとってこの数字がベストだと思っている」と分析する。

 さらに食事を取る怖さを減らすための工夫も施した。「最初は『お米を食べてね』と言っても、怖くて取れないだろうなと思ったので『引き算したらいいんだよ』と話した。例えば糖質を多く取った分、脂質を引き算するようなイメージ」と徐々に壁を取り除いていった。

 氷上外でも努力を続けるエースにとって、ラスト五輪まで残された時間は50日を切った。坂本は「悔いのない、やり切ったと思える演技がしたい。毎日自分に活を入れて、真剣に真面目に取り組んで『もう大丈夫』と思えるくらい練習を積めるように頑張りたい」。次はミラノの地でうれし涙を流してみせる。