トランプ米大統領が2日に署名して成立した「台湾保証実施法案」が波紋を広げている。米国がより積極的に台湾に関与するのではないかとSNSで歓迎されているのだ。当然、中国側は反発しているが、日中関係の緊張が高まる中、米国が〝参戦〟することになるかというと――。

 ホワイトハウスは2日、トランプ氏が台湾保証実施法案に正式に署名したと発表した。この法案は、2020年に成立した「台湾保証法」の枠組みを強化するもの。台湾保証法は、国務省に対し、台湾との交流に関するガイドラインなどを見直すよう促すもの。具体的には「米台関係の深化や拡大」「台湾海峡に関する問題の平和的解決に寄与する」などだ。そして今回の台湾保証実施法案は、国務省に〝定期的(2年あるいは5年ごと)に〟台湾との交流に関するガイドラインなどを見直すよう義務付けている。

 米メディアによると、同法案の核心は、米国が自ら設けてきた対台湾交流における「レッドライン」を段階的に撤廃することにあるという。

 米国は1979年に台湾と断交。交流促進を政策として明示する「台湾旅行法」が成立したのは2018年のことだ。それが20年の台湾保証法の成立へとつながった。

 共和党のアン・ワグナー下院議員らが今年2月、より台湾との関係を深化させる「台湾保証実施法案」を提出。その際は「この地域を支配しようとする中国共産党の危険な行動に断固反対するというメッセージを送るものだ」と述べていた。

 そして、同5月に台湾保証実施法案が下院で可決。同11月18日に上院が全会一致で可決した。発効には、トランプ氏の署名を待つだけだった。

 これに中国国務院台湾事務弁公室の張晗(ちょう・かん)報道官は3日午前の定例記者会見で、この法案は「中国の内政に乱暴に干渉し、『一つの中国』の原則および中米3つの共同コミュニケ(文書による国家の意思表示)の精神に重大に違反している」と表明した。

 中国外務省の林剣副報道局長は同日の定例記者会見で「中国側は米国に対し、『一つの中国』の原則と中米3つの共同コミュニケを着実に守り、台湾問題を慎重に扱い、米台間の公式往来を停止し、『台湾独立』勢力にいかなる誤ったシグナルも送らないよう強く求める」と主張した。

 台湾有事を巡る日中関係の緊張が高まる中、SNSでは「トランプ大統領の今回の判断は、まさに自由陣営のリーダーとして評価されるべきだ」「これで中国が日本を非難する理由は消えました」と歓迎する投稿が相次いでいる。だが、ある台湾事情通はこう指摘する。

「同法案は、台湾保証法の実施を具体化するもので、親台湾色の強い法案です。とはいえ、台湾の法的地位を変えるものではなく、直ちに国交回復や米国に台湾大使館設置が行われるわけではありません。台米間の交流が〝非公式〟から、〝準公式〟なものになるということです」と語る。

 中国の習近平国家主席は先月24日、トランプ氏に電話して台湾に対する中国の立場に理解を求めたばかり。一部では、その後高市首相に電話したトランプ氏が「『台湾の主権に関して中国政府を挑発しないように』と助言した」と報じられている(木原稔官房長官は否定)。その直後にこのような法案を成立させれば中国を刺激しそうだが…。

「トランプ氏の署名は単なる行政手続きで、この法案自体は以前から推進されていました。したがって、最近の国際情勢と結びつけるべきではないでしょう。また、法案は、中国を狙ったものではなく、トランプ主導でもなく、米国内の政策調整が主目的です。挑発度は低く、中国が本気で怒る可能性は小さいでしょう。せいぜい声明を出して、それ以上の深入りをけん制するぐらいだと思います」(同)

 関係国の駆け引きは続く。