アスリートの体調を唾液で把握して、その場で指導やケガの予防に利用できる技術が登場した。すでに大学の陸上競技部などで使われ始めており、基盤となった技術について開発メーカーに尋ねた。
【アスリートをサポートするコンディション管理ダッシュボード】
新たに開発されたこの技術は、アスリートの唾液を測定してその選手の免疫状態を見える化し、それをデータ分析や状況把握を支援するダッシュボードに表示する。ダッシュボードのデータを基にチームのトレーナーやコーチが選手に対してより効果的な指導を行う際に役立てるものだ。
開発したバイオベンチャーのイムノセンス(大阪府吹田市)の杉原宏和社長は、こう説明する。
「この技術は2社の共同開発で誕生しています。当社が開発した超小型の測定キットと、スポーツテック企業のユーフォリア(東京都千代田区)が提供するアスリートデータマネジメントシステム『ONE TAP SPORTS(ワンタップスポーツ)』を連携させ、選手のコンディションを科学的に見える化するダッシュボードを提供するものです」
プロスポーツチームや実業団チーム、全国の大学などでコンディション管理やケガ予防に活用されることを目指している。すでに今年の箱根駅伝では出場2選手の唾液をこの技術で測定することにより体調、睡眠、食事、トレーニングなどのデータを集積して大会当日までのコンディショニングをサポートするトライアルも実施した。
【従来の血液検査は時間がかかった】
開発の背景には近年、スポーツ現場でオーバートレーニングによるパフォーマンス低下やケガのリスクなどへの対策が課題となっていることがある。選手の客観的なコンディションを詳細に把握するためには、従来は採血を伴う血液検査などが行われてきた。しかし、この方法は検査、解析に時間がかかり、リアルタイムでの評価が難しかった。また、検査する選手への身体的負担が大きいというネックもあった。
そこで注目された技術が、イムノセンス独自の電気化学免疫測定技術「GLEIA(グライア)」である。GLEIAは、わずか数マイクロリットルの唾液を測定して、唾液に含まれる免疫たんぱくの濃度を10分程度で測定することができる。唾液に含まれる免疫たんぱくは、口や鼻などの粘膜でウイルスや細菌の侵入をバリアとして防ぐ働きのある成分だが、運動やストレスで身体に負荷がかかると分泌量が減りやすいので体調変化のサインとなる。その免疫たんぱく濃度の測定結果を、ユーフォリアのワンタップスポーツに蓄積されたパフォーマンスや体調変化に関するデータと統合し、リアルタイムでコンディション管理ダッシュボードを表示する仕組みだ。
今年の夏からは、この「免疫+コンディションダッシュボード」の提供を開始しており、全国の中学、高校、大学、実業団、プロチームのパフォーマンス向上と健康管理を支援していきたいとしている。
イムノセンスの免疫測定技術GLEIAは、このようにスポーツ領域で活用され始めているが、もともとは医療分野のための技術である。では、どのように免疫測定が利用されるのか。次回は家庭や病院での「GLEIA」について話を聞く。












